記憶58 ページ13
「まったく、だから今日はやめておけと言ったんだ」
「すまない留三郎」
廊下から誰かの話し声が聞こえる。
あとからしたのは伊作さんのものだろうか。
もう一人の声は誰のものか分からなかったが、彼がいるということは保健委員会が帰ってきたということを意味している。
雨に降られて濡れたのだろう、ギシギシと木の板が軋む音とともに、ぴちゃんぴちゃんと拭ききれなかったと思われる水の滴る音がした。
「まさか土砂崩れで岩が落ちてくるなんてな」
「本当に困ったよ。不幸中の幸いは、後輩達に当たらなかったことだね」
「でも、それで伊作が足に怪我を負ったから帰りが遅れたんだろう?」
「それを言わないでくれよ……」
「す、すまない」
(伊作さんが怪我?)
岩に当たったのだとしたら相当な大怪我を負ったはずだが、果たして大丈夫なのだろうか。
しかし聞こえてくる声にそこまでの緊迫感は感じられない。
(岩を避けたら躓いて、足を捻ったとか?)
二人が部屋を通り過ぎたため、会話は聞こえなくなる。
まあ歩けはするようだし、そこまで大事には至らなかったのか。
よし、今度こそ……と机に向かい直る。
すると今度はバタバタと大きな足音が聞こえた。
足音は私の部屋の前で急ブレーキをかけたようにキキッと音をさせて止まる。
(来客か?)
筆を置き、私は障子に視線を向けた。
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月8日 20時