20話 ページ22
『……あ、の』
「どうした」
縁側で新聞を読んでいた社長に、勇気を出して話しかける
『……あの後、私が辞めたあと、芙羽梨さんと探偵社って、どう、なったんでしょうか』
「……ああ」
新聞を閉じて、私の入れたお茶をお飲みになる
……後ろから見ているだけなのに、そんな仕草ですら美しくて好きだった
「……何も、変わらん。紫桜がいなくなったことで華咲は仕事を押し付ける相手がいなくなったと嘆いていたが、結局のところその仕事は他の社員に回っているだけだ」
『……』
「他の探偵社員も、紫桜が芙羽梨をいじめていたと未だ信じている」
『そう、ですか』
「……すまない、誤解を解いてやれなくて」
『い、いえ!私にも悪い所はありました。……今になって考えれば、社長以外全員大嫌いなんて……うん、ちょっと、嫌われて当然、かも……』
苦笑いしかできない
でも本当に嫌いだったし今も嫌いだしなぁ……
「それは……また……いや、それなら尚更だ。探偵社以外にも、紫桜には生きる道だってあるだろう」
『……そうでしょうか。自分のことって、わかってるけど、自分では全然分からなくって』
「今はそれで構わん」
わしゃわしゃと頭を撫でられる
『……ん、ありがとう、ございます』
「感謝されるようなことなんて、私は何も」
『……全部、ですよ』
「全部?」
『貴方が生まれてきてくれたこと、探偵社の社長でいてくれる事。……私のことを、そばに置いてくれること、全部、全部へのありがとうです』
「……そうか。照れるな」
『照れることじゃありません!……当然の感謝ですから』
社長に笑いかける
社長も、微笑みを返してくれた
……実際のところ、私には芙羽梨も探偵社もどうでもいいのだ
探偵社だって同じだろう
私がいてもいなくても変わらないのだし、実際のところお互いに興味など大してないのかもしれなかった
それでも全部、これでよかった
探偵社とは合わなくて、全部だめにしてしまったけど
それでも彼の隣にいられたら、それで全部帳消し
……幸せって、多分こういうことだ
結局下半身も動かなくって、私はダメダメなままなのに
自分の隣には彼がいてくれる
……どれだけどうしようもなくても、それだけで良かった
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朱鷺 - 太宰さんが馬鹿でウケる (1月30日 9時) (レス) @page25 id: b34111cf4c (このIDを非表示/違反報告)
太宰の包帯少女 サブ - お話全て読みました。感動です。死にます。 (1月19日 4時) (レス) @page24 id: 7ba6d2397a (このIDを非表示/違反報告)
太宰の包帯少女 - ふわり許すまじ!!紫桜ちゃん幸せになって…!! (1月17日 11時) (レス) @page1 id: 76044cacdf (このIDを非表示/違反報告)
お稲荷 - 初コメ失礼します! こういう社畜系のお話大好きなんですよね〜 これ作った作者さん神でございます (1月13日 19時) (レス) @page18 id: bf74b10c25 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 社長オオオオオオ!、!夢主ちゃんを守ってあげてええええええ!!! (1月12日 17時) (レス) @page15 id: a350d82ee1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:riizumi7 | 作成日時:2024年1月10日 1時