検索窓
今日:1 hit、昨日:48 hit、合計:27,056 hit

15話 ページ16

……目が、覚める
口枷は外されているようだ

傍で新聞を呼んでいた社長がこちらを見る

「……起きたか。お前の処分は今日の午後、社員の前で発表する。それまではまだ少し寝ていなさい」

新聞を閉じてこちらに向き直ってそう仰る社長
処分、か
やっぱりダメなのだろう

そもそもこんなに騒ぎばかり起こして迷惑をかける事務員、置いておく必要が無い
胸が締め付けられるようでずっと苦しくて死にそうだ

『……しゃ、ちょう』

まだ上手く声が出ない
首を吊ったからだろうか

与謝野先生からは後遺症もあるだろうが自業自得だ、妾は直さないって言われちゃったし


「なんだ」

『……ごめんなさい、迷惑、ばっかり』

「迷惑なものか。……紫桜は、ただ生きていてくれるだけで良い。それだけで、充分役に立っている」

頭を撫でられる

『…………後遺症、残るらしいんですって』

「……それ、は」

社長の顔が強ばる
怖いけど、そう嘆いてくれるのは嬉しい

『……下半身の感覚が無いんです。与謝野先生は、治らなければ、下半身不随かもって』

このまま一生車椅子なんて、面倒だし嫌だな

「っ、治せないのか、与謝野には」

『治せるかも分からないし、治す気はないって。別にいいです、私も、治る気なんてないから』

「そんなことを言うな。……必ず、必ず治す、幸せにしてみる。お前だけは……絶対に……」

『……やめてくださいよ。勘違いしちゃう』

そうやって人たらしなのは社長の悪い所だと思う
私だけじゃないなんて、とうの昔に知ってるのに

『……好きです』

「……何を、今はそんなことより、足の治療を……」

『っ、そんなことじゃない……!』

思わず、大声を出してしまった
……なんて不敬だろう
私って、本当最悪

『酷い扱いも、嫌がらせも、ここに、貴方の傍にいられるなら、なんだって耐えられます。

私にとってここは地獄だけど、貴方にとっては大切な居場所だから。
そう思えば、どれだけ嫌いでも、散々に使われて、そのうえでボロ雑巾みたいに捨てられたって構わないのです』


『好きです』

『愛して、います』

何よりも、誰よりも









あぁ、でもきっと、ダメなのだ

私は、愛する人に殺されることすら叶わないのだろう
それでも構わない

こんな醜い感情を伝えて、それできっと
貴方の記憶に残ることが出来たなら

今までの人生に
今生きる私に

……意味は、あったのだと
ようやく___

16話→←14話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (101 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
173人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

朱鷺 - 太宰さんが馬鹿でウケる (1月30日 9時) (レス) @page25 id: b34111cf4c (このIDを非表示/違反報告)
太宰の包帯少女 サブ - お話全て読みました。感動です。死にます。 (1月19日 4時) (レス) @page24 id: 7ba6d2397a (このIDを非表示/違反報告)
太宰の包帯少女 - ふわり許すまじ!!紫桜ちゃん幸せになって…!! (1月17日 11時) (レス) @page1 id: 76044cacdf (このIDを非表示/違反報告)
お稲荷 - 初コメ失礼します! こういう社畜系のお話大好きなんですよね〜 これ作った作者さん神でございます (1月13日 19時) (レス) @page18 id: bf74b10c25 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 社長オオオオオオ!、!夢主ちゃんを守ってあげてええええええ!!! (1月12日 17時) (レス) @page15 id: a350d82ee1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:riizumi7 | 作成日時:2024年1月10日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。