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「とにかく、色々ありまして。ああこれお土産です、マフィアから拝借してきた機密資料。近いうちに必要になりますから、貴方の為にと思って」


分厚い茶封筒を私に差し出して、悪戯っぽく笑う。

「……」

「……社長?」

「…………一瞬気絶していた」

「あら、まあ」

口元に手を当てて、驚いたように目を見開く
驚いたように、とは言うものの瞳孔や体の硬直を見ると大して驚いてもいないようだったが

「っ……何を考えている!1人でポートマフィアに潜入など……もし何かあっても知らなければ助けに行くことも出来ないのだぞ!?」

体の奥からふつふつと湧き上がる怒りを吐き出した、……ギリギリ手を出すことは無かったが、正直に言えば平手でも打ってやろうかとも思った

「ええ、助けに来る必要はありません。お手を煩わせたくはないので」

当然のように言う
本当に、なんと叱れば分かってくれるのだろうか
乱歩を相手にする時もだが、自分は人を叱るのも得意では無いのだ

「……来い」

自分の横のソファを軽く叩く
彼女は不思議そうに首を傾げたが、あぁ、と一言呟いて私の隣に腰掛けた

「なんですか、社長。寂しくでもなりましたか?
触れたいならお好きにどうぞ。手元に留まることはなくても、私の全ては貴方のものですから」

くすくすと笑って、私の肩に頭を乗せた

「……心配した」

「えぇ」

「本当に、本当に心配した。3ヶ月だ、離れていた時間の分、紫桜のことを忘れていくのが、あぁ、私は……」

隣に座った彼女の肩を引き寄せて、自分が下になるようにしてソファに倒れ込んだ
きゃ、と短い悲鳴をあげて自分の上に倒れ込んできた紫桜を少々無理やりに抱きしめる

「ごめんなさい。異能は自分でも制御出来なくて」

私の首元に擦り寄ってきた彼女
……髪が首元に触れて、なんとなくくすぐったい

「……知っている。だからこそ、いい加減探偵社に……」

私に抱きしめられたまま大人しくしている彼女の背中を、赤子をあやす様に撫でた

「嫌」

「何故だ」

「私にはそんな資格ないでしょう」

私に抱きついている彼女の腕に力が入るのがわかる、どうして彼女はいつも、こう

「それはお前が決めることでは無い。私が決めることだ」

「じゃあ、やっぱり嫌」

……引き止めても無駄なのだろう
彼女はいつもそうだ、何よりも恋人である自分が理解している

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作者名:riizumi7 | 作成日時:2023年12月7日 23時

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