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「……はぁ。ま、首領の前では失礼のないようにな」
ヒラヒラと手を振って、どこかへ行ってしまう素敵な帽子の彼
……困った
途中までは案内されたものの、こうも1人にされてはなんだかマフィアに忍び込んだ不審者みたいだ
「失礼します。私の事、お呼びだって、素敵な帽子のお兄さんから聞いたのだけれど」
それでも呼んだのは向こうなのだ
そもそも、気に食わなければ全て斬り伏せて帰ればいい
……あぁ、でも人殺しは悪い事だから、嫌だな
嫌だけど、殺されるよりはいいかな
「よく来てくれたね。柊木紫桜」
「別に、構いません。休日も平日も、どうせ暇しているので」
「はは、まぁ君ホームレスだしね。単刀直入にここへ呼んだ理由を話すとね、君をうちに勧誘したい」
「まぁ、私を?」
「あぁ」
「……ごめんなさい、私、福沢さんを悲しませるようなことは……」
「斬り殺そうとしているくせにかい?君の殺人衝動は彼を悲しませていない、と?」
「……えぇ。悲しませては、いるだろうけど。それとこれは別なので」
斬り殺すことは構わない
その過程で傷つけることだって、きっと私は厭わない
……厭うことも、できない
「それは、残念だな」
「そう、でしょうか。私を勧誘したところで、そもそも役にはたちませんから、無駄でしょう」
「無駄では無いさ。……君は違うだろうが、少なくとも福沢殿は君を傷つけられないからね」
それはそうだろうな、と思う
どうしようもないくらい大切にされてるのは知っていた
それでも、あんまりにも正しくて、綺麗な人だから
そばにいたら私の目は眩んで、痛くて、どうしようもないくらい、壊さないといけないと思ってしまう
……ただ生きるために、自分が生きていいのだと思うために殺したいだけ
そんなものは動物と変わらないのに、私はそう在ることしかできない
……どうしようもないのだ、いつだって
マフィアの首領だと言った彼に背を向けて、そのまま帰る
護衛をつけようかと言われたけど、それも断った
暫くはどこかへ放浪しようか
……あの人に会うのも、何となく嫌だ
そんなことを考えては、また寒い風の吹く海沿いを歩いた
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作者名:riizumi7 | 作成日時:2023年12月7日 23時