それでも貴方の隣には ページ5
いつものように、街を歩いていた
適当に体を売る相手を探していた
それと同じくらい、食べるものを探していた
限界まで切り詰めれば一日一食で生きていられるけれど、やはりお腹は減るもので
街は、帰る家のない私を嘲笑うかのように寒さを増す
笑い声のような風の音が私を蝕んでいた
「……ね、ねぇ、お、お嬢さん」
声を掛けられた
酷い吃音、ああ、聞き覚えがある
以前の客だったか
「はい。……貴方、ですか」
少しだけ、顔を顰めそうになった
身を売る、というのは言葉通りの意味だけではなくて
力も知恵もない私が生きていくためには、ゴミを漁るか男に媚びるしかなかった
故に、ほら
……殴らせたり、下品な話、そっち方面で無理矢理だとか
後悔はない、そうしなければ飢えて死んでいた
餓死だけなら本当は特に気にすることもなかった
___でも、私には、彼の人がいるから
散々訳の分からないものに体を売って、穢れた自分には触って欲しくない
でも大きな手で頭を撫でられれば、どうしても嬉しい
助けを乞えば助けてくれることは何となくわかっていたけど、彼の人にだけはこんな自分見せたくない
彼の人に失望されるくらいなら拷問の挙句殺された方がずっと幸せだ
私の愛なんて、その程度で、実際こんなものは愛などでは無いのかもしれなかった
それでも、それでもだ
綺麗なところだけ見ていて欲しかった
「こ、今夜、ど、ど、う、かな?」
「……分かりました。きっちり、お代はいただきますから」
中年程度のそいつに、腕を掴まれて街を歩く
ニヤニヤと笑っているそいつが憎らしい
「紫桜ちゃ、んは、かっ、可愛いね、へ、へへ」
歩きながら、私の体に手を這わせてくる
腰の日本刀で切り落としてしまおうかと思ったけど、人殺しは悪いことだからやめた
25人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:riizumi7 | 作成日時:2023年12月7日 23時