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「そうですね。……でーと、行きたいです」
私の淹れたお茶を飲んで、口元を緩ませた
ああ、本当に、そういうところが大好き
「予定は何時にしようか。……如何せん師走は仕事が立て込んでいるのだが、お前の為なら……」
「私より、どうか街のことを見ていてください」
そんな貴方だから、私は好きなのです
なんて、恥ずかしいから口を閉じた
「……では、街で偶然出会えたら、でーとはその時にでも」
お茶を飲みきって席を立つ
いよいよ本降りになってきた雪を見てふと白い息を吐いた
「上着、返します。そろそろ失礼しますね」
上着を脱いで、畳んで机の上に置いて立ち上がる
「外は雪だ。家まで送ろう、それか、傘を」
「傘は、返す宛がないので」
「返さなくても構わん」
「形あるものは、寂しくなるだけなので」
……沈黙が、5秒ほど
「__そうか」
しんしんと降り積もる雪だけが綺麗だ
私の足音だけが社長室に響く
秘書の女性から刀を受け取って、微笑んで振り向いた
「……それじゃあ、また」
「もう、行くのか」
「ええ、行きます」
「……せめて、雪が止むまでは」
ちらりと、窓の外をみる彼
憂うように、また目を伏せた
「もう、社長ったらかっこ悪いですよ」
「……恋人との逢瀬を惜しむのは、当然だろう」
照れたみたいに、少し頬が赤い
……なんだ、可愛い所もあるんだ
「貴方も、そんなこと言うんですね。意外です」
「悪いか?」
「いいえ。……貴方も人間らしくて良かった」
カバンを持つ
マフラーを巻いて、今度こそ、ちゃんとしないと
「じゃあ、どうか元気で。
__縁が続けば、またいつか」
一人で帰る雪道は、酷く私に冷たい
2人ならきっと、繋いだ手の温もり位はあるだろうから
いつか彼と会えるなら、こんな雪の日がいい
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作者名:riizumi7 | 作成日時:2023年12月7日 23時