【歌い手】無(ム)【まふまふ】

22℃ ページ22

Side. Soraru






あの朝、
本当に偶然だった。





なんだか早起きしちゃって。
俺なのに偉いからコンビニでなんか買ってこようと外へ出た。
まだ梅雨で、雨が振り終わったような外の空気。








ひとりの女の人がうずくまっていた。
苦しそうだった。




それがAちゃんとの出会い。









どこにでも居そうな人だけど、何処か違う魅力があった。


白い肌に、吸い込まれそうな瞳。
やっぱりほかの人とは違う。









その人は毎日悲しそうな顔をしていた。
笑っていても笑っていなかった。





俺が元気にさせなきゃ。
そう、強く思った。


きっともう恋に堕ちていたのかもしれない。









･



彼女の悲しい理由を知ったのはそれからすぐのこと。




「あれ？」







Aちゃんの姿が見えた。確かにそうだった。


いつになく疲れているような…








…


…彼女は泣いていた。









その時彼女はある人の名前をたくさん呼んでいた。
寂しそうに、愛おしそうに、苦しそうに。





きっと彼女を苦しめているのはその人なのかな。
彼女の中にはその人が映っているんだな。

そう思えば悲しくなった。苦しくなった。







これが恋だった気付いてしまった。

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