狐面の裏の顔 【第三幕】

第８４話 ページ9

『ぅ、ああぁああああああああッ！！』



あまりの激痛に、Aは叫び声を上げた。



Aの前に立った琥珀が、申し訳なさそうに言う。




「すまぬ・・・A。堪えてくれ・・・もう少しの辛抱じゃ」




Aは歯を食いしばり、必死に痛みに耐えている。



右目から血が滴り落ちていく。



それは、頬を伝い、首元へと流れていく。




『いッ あ、 う、 ぐ・・・』






細い、雷のような光が、Aの右目を這う。




『ふ、ぅ………………うあッ！！』





光が目に突き刺さり、再び激痛が走る。





全ての作業が終わったとき、Aは完全に気絶していた。





　


あまりの痛みに、A自身が無意識に、この記憶に封をしたのだ。







　


だから、家の人間から話を聞くまで、自分に狐が宿っていることを忘れていたのだ。






　


美しい金色をしていた右目は、真紅に染まった。




その色は思わず見惚れてしまうほど鮮やかで。






　


そして、ゾクリと寒気がするほど、怪しかった。







血のような、紅。



深い、深い、底の見えぬ瞳。





　



感情を隠しやすい瞳だ。


　


　



そして、Aはそのまま成長した。

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