第９３話 ページ18
フェンスに腰掛け、Aは笑う。
その表情を見ると、言いたかった文句や感情が消えていくような感じがした。
口を開いてもうまく声が出ない。
だが、１つ、どうしても聞いておきたいことがあった。
何度か咳払いをして、声が出るかを確かめる。
そして慎重に口を開いた。
「A、お前、その髪、は・・・」
『あぁ…これ？呪いを解く代償だよ。
これくらいで済んだのは幸いだった・・・
髪以外に差し出す物は、他にないからね』
風が短くなった髪を揺らす。
日光を受けて青銀色の髪がきらきらと光った。
「差し出す・・・？どういう意味だ」
俺が問うと、Aは、少し長いけど、説明するぞ、と言い、何故か狐面をかぶった。
『願いを叶えるためには、必ず代償がいる。
逸話と同じで、リスクが存在するんだ。
差し出すもの次第で叶う願いは変わってくるけどね。
僕は、ヒスイに、髪の毛と皮膚の一部を差し出したよ。
妖怪の使う術は、時に人間の想像を遙かに超える物もある。
そんな術を使えるのも、極一部の奴だけだが・・・
まぁ、そう言った術の中には、当然、不老不死や、死んだ人間がよみがえるようなのもある。
だから、ね』
トンッと、Aはフェンスから降りた。
下駄が、高い音を立てた。
Aの夢で幾度か聞いた、幕が切り替わるかのような音。
ゆっくりと、Aは、狐面は、両腕を上げる。
舞台に立つ役者のように、張りのある声で、話を続けた。
『琥珀に頼み、僕は、もう一人の僕を作ってもらうことにした。
いわば、クローンだね。
琥珀は、術式を組むのが上手い。細胞と、体の一部があれば、簡単にソレを作れるんだ。
作られたソレは、僕と同じ存在になる。
その体なら、ヒスイの膨大な妖力に堪えることも出来るだろう。
成長は、一定の年齢になれば止まる。
年はとっていくが、見た目にさほど変わりはない。
半永久を生きる妖にとっては、普通の妖怪よりも格上になるね』
そこまでで、話は終わった。
因みに、とAは付け加える。
『式の時に話していたのはヒスイだよ。
僕の体で喋ることが出来る最後の機会だったからね。
僕は特に何も言う気がなかったから、ヒスイに頼んだよ』
身の上話をされるとはねぇ……、と苦々しく呟く。
もう、Aの中にヒスイは居ない。
その証拠に、Aの両目は美しい金色だった。
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haiki - 感動、感動の一言です！失礼ですが、何となく『狐』と言う単語に惹かれてクリックしてみたら、本当にすごかったです！こらからも続けるのだったら、嬉しいのですが・・・これからも、頑張ってください。 (2016年12月29日 23時) (
レス) id: 603df3e4f4 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴 - めっちゃハマった！感動した！ (2016年2月12日 20時) (レス) id: af6dad06a9 (このIDを非表示/違反報告)
ななえ - 感動しました。 (2016年1月13日 21時) (レス) id: 42f6409a50 (このIDを非表示/違反報告)
Head・phone - ハマりに、ハマった。 (2015年10月8日 13時) (レス) id: a1b07e2967 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 最高に いい小説でした！ 最近 他の小説を読んでも あまり ピンとこない 小説 が 多かったんで この 小説に ハマり ました！
これからも 小説作り 頑張ってください (2015年8月14日 1時) (携帯から) (レス) id: 222eea2be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零 x他1人 | 作成日時：2014年4月26日 15時
