狐面の裏の顔 【第三幕】

第８６話 ページ11

『やぁ、晋助。久しぶりだね？顔色が悪いけど、大丈夫？
だから、来るなと言ったのに』


「お前に言うことがあったからな。約束、破ってすまねぇ」




『・・・知ってる？晋助。

この空間は、「夢」じゃないんだよ。

現世とあの世の隙間。だから、無理に訪れた君の寿命を、大分削る』


「夢じゃねぇって事は知らなかったが、俺の寿命が縮まったってのは知ってる。

ま、どうでも良いけどな。


俺は、俺の意志でここへ来た。そのための駄賃と思えば安いもんだ」



『相変わらず無謀なことで・・・。

それで？僕に言いたいことがあるんだろ？』


「ああ。

A、俺は・・・」



『ストップ。そういえば、僕も君に言いたいことがあったんだ』


「・・・・何だよ。無理矢理ここに来たことは、さっき謝っただろ」


『いや、もっと大事・・・。ん？大事なこと・・・だよな？うん。重要だよ』


「だから何だってんだよ。俺だって言いたいことが・・・」









『晋助、僕は、君のことが好きらしい』







「・・・・はっ！？」


『いや、他人事のように言って悪い。
でも、さっき気が付いたことで、僕も実感がないんだ』



「嘘、だろ。いや、嬉しい、けど・・・さ。

唐突すぎるうえ、俺が言おうとしてたことと同じじゃねーか・・・」



『あ。なんだ。晋助、僕の事好きなんだ。良かったぁ』


「何でお前はそうしれっとしてられるんだ！？」


『いや、実は、この空間に入れるのって、僕自身か、僕に宿っているヒスイ。
そして、僕が心から信頼した人。あと、愛している人くらいなんだよ。



まぁ、実感は無いけどさ。フられたら流石に僕も傷つくなーと思って』



「っ/////愛、とか、簡単に言うなよな…

はぁ・・・・・・これじゃ、重たく考えてた俺がバカみてぇじゃねーか」



『迎えに来てくれたことは嬉しいよ？だって、迎えがなけりゃ、帰れない』




「・・・・俺が道案内でもしてくのか？」


『いや、その必要はないけど・・・ヒスイはどう？もう、僕が戻っても良い？

君は、現世を満喫できたかい？』



"ああ、もう十分だよ。それに、こちらに戻って貴方達を見ていた方が楽しそうだ"






『そう。じゃあ、帰ろうかな』






高杉晋助の手を取り、狐神Aは走り出した。


亀裂が入った、空間の裂け目に向かって。

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