【d!】好きなものを好きなだけ。 (ページ9)

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桜の下、君を待つ。【ni】ページ9

「いつか、必ず帰って来るから。それまで、待ってて欲しい。」

いつか、愛しい彼女へと言った言葉。
今考えれば無責任でしかなかったこの言葉を、良く彼女は受け入れてくれたものだ。いつか。なんて、もう戻れるかすらも怪しかったのに。

キャリーバックを転がしながら彼女と約束をした桜の前に立つ。

「…居らん、よな。さすがに。」

そりゃあそうだ。もう5年も経っていてまだ待っている方が驚きだわ。
…そんなことを心で言いながら少し、ほんの少し。もしかしたら…なんて思ってる自分がいた。
そんな自分を自嘲的な声で笑う。
…虚しいなぁ。

『…、兄さん？』

急いで振り返ると、5年前と何も変わっていない愛しい彼女、Aが、立っていた。
目を丸くしているAをキツく抱き締める。
いた。Aが、いた。待っていてくれた。

『兄さん、痛いなぁ。…おかえり。』

Aの声が、少し嬉しそうに聞こえる。
…そろそろ、言わなきゃ。ただ逃げるだけはもう、やめよう。

「…なぁ、A。」
『なあに。』
「…どんな、どんな俺でも、どんな風になって帰って来ても、受け入れてくれるか…？」

沈黙。そして小さく吹き出す声。

『当たり前でしょ。私達は、いつまでも待ってるよ。…帰って来てよ。』

涙が出そうになるのは、桜が目に入ったせいにでも、しておこうか。