よくいる転生者はヤバい学園に転校した【男主】 (ページ15)

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「なるほどな」

　通常の学校であれば生徒会室にまず存在しないであろう黒い椅子。それに当たり前のように足を組みながら座っている生徒会長、グルッペン・フューラーはエーミールの報告に合点がいった。

　彼は問題の生徒がエーミールの手伝いをしたのを生徒会の人間だから仲良くしようと目論んでると思ったのだ。ところが彼が逃げた後すぐにエーミールはそもそも彼は自分を生徒会の人間と知らなかったと庇った。とりあえず呼び戻してみれば自己紹介すらしてないときた。

　そして今日、エーミールに確認させてみたところ彼はまったく権力に興味のない普通(・・)の学生なのだとわかった。

　この学園は将来一流企業や政界などに進む生徒がほとんどで、委員会どころか係などの役職も競争率が上がる。結果として権力が強くなり、委員会に所属出来なくとも委員会の役員と仲良くするだけでも何かしら恩恵がある。彼が狙ったのはそれだと思ったが検討違いだったようだ。

「まあ転校生やしな。2年とはいえまったく権力の殺伐とか経験すらしてないんやろ」

　転校生は女子! と期待していた鬱大先生は興味無さそうにスマホを見ていた。どうせ48人目か49人目の彼女とのRAINだろう。

　彼の意見はもっともで社会的地位の高い家の者が多いこの学園では殺伐とした権力争いが多い。ごくごく普通の一般生徒も1年いれば慣れるものだ。つい彼を2年生として見てしまったがそういう面は入学したての1年生と変わらない。

「昨日は本当に買い物して帰っただけらしいしな」

　しかも偶然いた最俺のヒラとラスト一個のサーモンを取り合いになるがすぐに譲り、結局在庫が無くてマグロを買ったらしい。エーミールにわざわざ軽い方の荷物を持たせたのも合わせて考えると、要するに彼は自分から貧乏クジを引くタイプのお人好しなのだろう。

「少なくとも今は(・・)問題なさそうだな」
「せやな、監視も外してええやろ」

　転校生という学園ものでよくあるワードに興味はあるが、一般人(モブ)にわざわざ人をつけるほどでもない。それならの七不思議の調査でもさせた方がよっぽど有意義だ。

「さて、そろそろ授業だ」
「あっ今日化学あるやん」
「ショッピくんお前、まだ生徒会入ってないんやし入り浸んなや」

　現在ゾムに代わって見張りをしている国民に止めるよう連絡する。彼が毒になるか薬になるか、あるいはどれにもならないかはまだまだわからない。