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「…で、ここをここに…。」

「…え、なんで?」

「こういう公式なの、覚えて。」

「っあ〜…。無理!疲れた!休憩しよ!」

「まだ20分しかやってないんだけど。」

ため息をつきながらシャーペンを手から離す。

「なんかさ、一気に難しくなったよね?」

「まあ難しくなったのは認めるけど…ちゃんと授業聞いてればこうはならないと思うけど?」

不満げに頬を膨らませながら、大ちゃんはノートの端にシャーペンを滑らせる。

「…ウサギ?」

「残念、猫。」

「絵下手すぎでしょ…。」

大ちゃんにつられて俺も落書き。

「伊野ちゃんこそ人のこと言えた立場?」

「え、なんでよ。どっからどう見ても可愛い猫でしょ。」

「犬かと思った。」

「ひっぱたくよ。」

ていうかこんなに分かりやすく説明してるのに、全然理解してもらえないとか…ひっぱたいてもいいと思う。

「…ごめんね、伊野ちゃん。」

「なに、急に。どうしたの?」

「いや…。毎年毎年迷惑かけてるよなぁって…。」

「今更だね。」

何で急にこんなこと…。

「薮ちゃんさぁ、多分…というか絶対、俺と伊野ちゃんを二人きりにさせたくないんだろうね。」

…あぁ、帰る前の変な薮はそういうことね…。

「けどしょうがないでしょ。それに、それも今更だって。」

「そうなんだけどさ…。薮ちゃんからしたら複雑だろうなって思っちゃって。」

「…。」

何で大ちゃんが悲しそうな顔するの?

「痛っ。」

重くなった空気を変えたくて、大ちゃんのおでこをシャーペンで小突いた。

「そう思うならちゃんと授業受けてテスト前に俺に泣きつくのやめてよね。」

「…善処します。」

おでこをおさえながら苦笑いを浮かべる大ちゃんを見て、多分これからも泣きつかれるだろうな…と思った。

それにしても薮…いくらなんでも心配性過ぎない?

俺と大ちゃん何年一緒にいると思ってんの。

流石に大ちゃんもこんな物好き好きにならないでしょ。

ほんっとに、呆れるくらい心配性なんだから…。

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作者名:さくらもち | 作成日時:2017年8月14日 1時

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