437、欲しいもの ページ16
「そういえば、もうすぐAお嬢様の誕生日ですね。」
ある日、涼介にそんなこと言われた。
『…そうだね。』
「今年は誕生日プレゼント、何がいいですか?」
涼介は昔から、私が欲しいと言ったものを買ってくれていた。
その理由は、私が残念がらないから。
小さい頃ならともかく、ずっとこうだからなぁ…。
「欲しいもの、ありますか?」
『そうね…。』
なんて、考えるフリしてるけどもう答えは決まってる。
『…今年は特に思い付かないわ。』
「え。」
『だから、涼介が決めて?』
私の言葉をきいて、涼介は珍しく焦っているように見える。
「…そ、そうですか…。考えておきます。でも、欲しいものが見つかったから遠慮せずに言ってくださいね?」
『うん。ありがとう、涼介。』
…まあ、本当は欲しいもの、あるんだけど…。
それは私が頑張らないとね。
「それにしても…毎年あれがいい、これがいいって言ってたのに、今年はないんですか?」
『そうね。…ていうか、そんな言い方されると、私が物欲の塊みたいじゃない。』
「あれ?違いました?」
『わざとやってるんだ?』
「はい、勿論。」
久しぶりに煽られた気がする…。
『…大体、涼介は…何もわかってない。』
「…?何か言いました?」
『…何でもない。とにかく、考えておいてよね。当日までに間に合わなかった、なんて許さないんだから。』
「…はい。」
そう言って、涼介は私の部屋から出ていった。
『はぁ…。』
一度でいいから涼介自身が選んだプレゼントが欲しい。
そう思うのって、ワガママなこと?
…頭に浮かんだのはデートの時に買ったストラップ。
あんな感じでも良い、ペアじゃなくたって良い。
『馬鹿だなぁ。』
好きな人から…涼介から貰って嬉しくない物なんてないのに。
そりゃ、昔は純粋に欲しいものがあったから嬉しかったけど…。
年が上がるにつれて、嬉しい気持ちはあるけど…。
そう思うようになって。
でも、素直に言えなくて。
…やっと、今年言えたんだ。
…それにしても、涼介…今年も自分で考える気はなかったんだ…。
仕方ないんだろうね、さっきも言ったけど昔からずっとだったから。
涼介にとってはそれが当然だったんだろうね。
…でも、やっぱり寂しいなぁ、なんて。
涼介は私に興味ないのかなぁ、とか思っちゃうよ。
…何で椿は涼介が私のことを好きだってあんなに自信満々に言えるんだろう…。
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作者名:さくらもち | 作成日時:2017年5月10日 18時