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両手で支えていたウミガメを手元に下ろして、ちらりとジオウたちを一瞥。引いてるんだか、困惑しているんだか、軸足を一歩下げてその姿勢で固まっていた。可哀想に。
煽りがてらにウインクして、ティードの頬に手を伸ばした。意図を悟ったのだろう、彼は素直に目を閉じる。気を許されてるなあ、なんて絶えず揺らめく仄暗い優越感に薄く笑った。
つられて密やかに弧を描く唇を親指でなぞり、背伸びして口付けた。ただし彼らとの間に、ウミガメを巧妙な隔たりとして重ねて。何を起こしたかを察せられたとしても、核心的な光景は何一つ見えなかっただろう。
一仕事果たしてくれたウミガメを腕に抱いて、彼らに向き直る。
「お前たちのせいで俺もこいつも力を失ってるんだ、どうせ何も出来やしない。それとも、仮面ライダーともあろうお前らがァ……こんな所で事を構える気か？」
大袈裟なまでに抑揚をつけて、巨大水槽を背に両手を広げるティード。声の深い反響も相俟って、さながら完成度の高い演劇だ。そして流石はかつて魔王の器を持っていた男と言うべきか、タイミングよく雄大なジンベイザメが横切った。
「邪魔だ、失せろ」
作戦以来の絶対零度の声色に、目の色に、興奮で背中がゾクゾクした。さっきの顔を知った今、益々二面性が際立って……嗚呼、この人間性が堪らない。思わずウミガメを抱き潰しかけて、慌てて力を弛める。
殺意に近い敵意を間近で浴びせられたジオウはと言えば、真摯な眼差しで正面から抗っていた。こちらもこちらで流石は主人公様である。
「……行こう、ゲイツ、ツクヨミ。せっかく来たんだから、俺たちも楽しまなくちゃ」
「本当に、良いの？」
「もしまた悪いことをするなら、何度だって立ち開かるだけだ」
言うが早いか踵を返し、足早に順路を抜けていくジオウたちを見送る。賢明な判断だ……と、強気にいきたいところだけど、実の所私たちは見逃されただけで。
「ご立派なヒロイズムだこと」
「ああ全く、うんざりする」
それを許すしかない無力な自分たちにも辟易するが、諦める他ない。
気持ちを切り替えようと、水槽のすぐ前まで近寄って、人差し指でアクリルガラスに触れた。微々たる力を波紋のように少しずつ少しずつ広げ語りかける。
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深月(プロフ) - 横峯俊さん» お久しぶりです、まだ見てくださっていたのですね……！励みになります、ありがとうございます (2021年7月23日 9時) (
レス) id: 48437a73d0 (このIDを非表示/違反報告)
横峯俊(プロフ) - いつも拝見させていただいてます。いつまでも、更新は待っています！ (2021年7月20日 18時) (レス) id: e7388357bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水記 | 作成日時：2020年8月13日 20時
