冨岡、贈り物するってよ ページ6
なぜ俺はこんなところにいるのだろうか。
ぐいぐい腕を引っ張って人混みをかき分けて行く炭治郎にされるがまま、町へと繰り出したのはいいものの。流石都の中心部と言うべきか、随分と賑わっている。
まだ日は高い。鬼は出ないだろうが、柱ともあろう者がこんなに呑気な日々を過ごしていいものなのか。
「さあ、義勇さん!今日はAさんへの贈り物を見ましょう!」
ふんす、と謎の効果音をつけて張り切っている炭治郎。いい加減手を離してほしい、と思ったが…楽しそうなのでそのままにしておこう。
炭治郎曰く、今日で俺が水縹に自己紹介をした日から三ヶ月経ったらしい。
もう十分に日も経って俺のことを知ってもらえただろうから、そろそろ贈り物の一つでもしてみるのがいい、と。朝早くに炭治郎が押しかけてきて、あれよあれよと言う間に連れ出された。
「生憎、俺はこういうことに慣れていない」
「ん〜、じゃあ、義勇さんはAさんにどんな格好をしてほしいですか?」
「どんな…」
思い浮かべるのは、朗らかな笑みで俺を見る水縹の姿。本人はあまり興味がないらしいが、着ると胡蝶や胡蝶の継子が喜ぶから、という理由で華やかな着物を着ていることが多い。確かに似合っている。
「特にないな」
苦笑いを浮かべる炭治郎を横目に、呉服屋に並べられた着物を見る。昨日は、そこにあるような赤を基調とした牡丹の花が散らしてある着物を着ていた。軒先に並べられた帯留や帯締の中には髪飾りの類も置かれている。
日替わりで多種多様な着物を着ている水縹だが、髪だけは、邪魔になるから、と大抵の場合結っている。耳隠しと呼ばれる髪型を好んでよくしているが、髪に飾りを着けていることはあまりなかったはずだ。俺の記憶が間違っていなければ。
「あれっ、義勇さん、決めたんですか?」
「…ああ」
それじゃあ、早く帰って渡さないといけませんね。
そう言って浮かべた炭治郎の笑みは、どこか水縹と似ていた。
「俺は此処で待ってますね」
蝶屋敷の前で炭治郎と別れ、水縹を探す。
強い風が縁側から吹いて、その流れに乗って椿の花に似た匂いがした。目線を向けた先にいた水縹は、珍しく髪を下ろしている。風に靡く髪を押さえる姿を、柄にもなく綺麗だと思った。
「水縹」
声を掛けると、気づいた彼女は満面の笑みを浮かべて此方に駆け寄る。その手に先程買った髪飾りを乗せれば、更に花が咲いたような笑みを作って俺を見た。
こんな顔が見られるなら、贈り物も悪くない。
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星野よだか(プロフ) - 由衣さん» 冨岡さんの言葉足らずさを活かすお話作りが目標でしたので、そう言っていただけて嬉しいです〜!これからも冨岡さんの頑張りを見守ってあげてください…笑 (2019年11月30日 12時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
由衣(プロフ) - 言葉足らずさが笑わせに来る(*≧艸≦)冨岡さん頑張って (2019年11月30日 11時) (レス) id: 7d3973f356 (このIDを非表示/違反報告)
星野よだか(プロフ) - orangeさん» ありがとうございます!冨岡さんはこれからも頑張っていきますよ…! (2019年11月24日 22時) (レス) id: 61486b168d (このIDを非表示/違反報告)
orange(プロフ) - めっちゃ面白いです!冨岡さん、がんばれ (2019年11月24日 22時) (レス) id: 39433c79c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星野よだか(ほしのよだか) | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年11月23日 22時