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「才能を持つ者、持たない者」 ページ9

良太郎はとりあえず無事だった事にほっと胸をなで下ろし、声をかけた

「千秋さん・・・ここにいたんだ」

「あんたあの時の・・・どうしてここに?」

「色々あって・・・その、退部届けを出したって本当ですか?」

「・・・あんたには関係ないでしょ」

退部届けについて聞くとそっぽを向かれた

(どうしよう・・・何て言えばいいのかな?)

”良太郎。ここは任しとき!”

(え、ちょっ・・・!)

キンタロスは有無を言わさず良太郎に乗り移る

「せやな。確かに俺は部外者やし、辞めるのもお前の自由や。けどな、空坊は心配しとったで?アカルに電話してお前を捜す位に」

「・・・っ・・・」

空の名を聞いて、千秋は罰が悪い表情をする

やはり空に酷い事を言ったと自覚していたようだ

「・・・もう、疲れたのよ。これ以上、惨めな思いをしたくないの」

千秋はぽつりと語り始めた


「去年ーあの子が・・・空が入ってきて、最初は本当に嬉しかった。あれだけ有望な後輩ーどこまで伸びるのか楽しみだった。何よりも先輩として、ひたむきなあの子の手本になれる事が誇らしかった」


千秋はその時の事を思い出したのか、懐かしむように苦笑する

それは空の入部を心から喜び、先輩として手本になれる事を誇りにしていた事を伝えさせてくれが・・・

「ーでもある時、練習の最中に気づいてしまった」

「瞬発力にパワー、体幹の強さにバランス感覚・・・古流の空手で磨いたらしい、技のキレや格闘センスそのもの・・・あの子がーあたしとは次元の違う”本物の天才”だって事に」

「今はギリギリあたしの方が上だけど、すぐ、あっという間に追い抜かれるーそれに気づいてから、あの子に笑顔を返せなくなって・・・空への真っ黒な気持ちを、抑えきれなくなっちゃって・・・」



そこまで言うと、彼女は両手で顔を覆う
今は辛うじて自分が上回っているが、直ぐ追い抜かれる

その事を知らず純粋に自分を慕ってくる空は、青春の全てを空手に掛けて人一倍努力してきた自分を嘲笑うかのようで、彼女にとってこれほど惨めな事はなかったのだ

「可愛いかった筈の後輩に、辛く当たるようになって・・・そしたら、そんな自分に益々嫌気が差してきちゃって・・・」

「持つ者」と「持たざる者」の葛藤

空を妬む自分自身への嫌悪

それらが千秋を追いつめてしまった

「お前・・・」
(千秋さん・・・)

千秋の心情にキンタロス、良太郎は何も言えなかった

「お互い未熟者」→←「退部届け」


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らい(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしています。更新は大変だと思いますが、自分のペースで頑張って下さい。応援しています。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 02ecfe8e59 (このIDを非表示/違反報告)
にわとり(プロフ) - 初めまして、お話読みました。素敵です..!私も書き始めて浅いですが、よければ読んで、意見を聞かせてください..! (2019年8月25日 18時) (レス) id: b7c5b25082 (このIDを非表示/違反報告)
オンブラ - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2019年8月9日 0時) (レス) id: 8751dc96a1 (このIDを非表示/違反報告)
- 続き楽しみにしています! (2019年3月15日 20時) (レス) id: 8656a872ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rin | 作成日時:2019年1月12日 1時

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