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第11話【岳丸】 ページ11

自分が顕現されてから暫く経つ。
本丸には相変わらず、鍛刀部屋から雄叫びが聞こえ、未実装の刀剣達で溢れ、…うん、まあ和やかな雰囲気を醸し出している。
本丸もようやく本丸らしくなってきた。
演練で知り合った刀剣に話を聞く限り、就任からまだ数日にしては、所謂「レア刀」が多い本丸に分類されるのだと言う。
…全員未実装であるから、貴重も何もないと思うのだが。
岳丸は何度目かの演練を終えた体を癒すため、審神者が必死に書類整理をしている執務部屋の縁側に腰掛け、庭の桜木を見上げながら三色団子を「うま…」と密かに感動しながら頬張っていた。
今はこんな風にゆったりしているが、それも今のみである。あっという間に団子を平らげると、審神者の机から自分が書けそうな書類を抜き取ってその向かいに正座し、無言で手伝い始める。

そして互いに黙々と作業し始めて数時間、「失礼致します」と鈴のような声が部屋の外からしたかと思うと、その小さな手で器用に襖を開け、こんのすけが姿を現した。

「主様、時間遡行軍に動きが」
「…!遂に来たか…」

主が今まで机上に走らせていた手と筆を止め、こんのすけを見やる。

「ちなみに場所は?」
「江戸幕末の、函館にございます」
「…戊辰戦争」

無意識のうちか、岳丸の口から言葉が溢れる。
自らが経験していると、こんなにも言葉に敏感になるものなのかと自分でも驚く。

「はい。まだ奴等の目的は分かりませんが、どうやら新政府軍陣地の近くをうろついているようです。…どちらにせよこのままだと歴史が変わってしまうのはまず間違い無いでしょう」
「成る程、了解した。早急に部隊を編成して向かわせよう。岳丸、部隊長を頼めるか」
「ああ。…しかし、初陣で部隊長とは光栄だな。善処しよう。他の隊員はどうする?」
「今から編成を考える。先に出陣準備をして待っていてくれ」
「あいわかった」

横に置いていた本体を掴んですくりと立ち上がると、部屋を出て甲冑を着けるべく自室に向かった…のだが途中通る廊下で、床に桜の花弁が一枚落ちている事に気付き何となく摘まみ上げた。

「…そういえば、さっきも鍛刀部屋に資材を運んでたっけな、主。俺達が帰還する頃には打ち上がってるだろうな。」

摘んでいた指の力を緩ませると、花弁は風に乗ってさらにひらひらと蝶のように運ばれていく。それが見えなくなるまで見送ってから、岳丸は再び歩き始めた。

第12話【小桜藤四郎】→←第10話【帆凪藤四郎】



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赤信号(プロフ) - 更新終了しました。 (2019年4月23日 0時) (レス) id: 674c6f2783 (このIDを非表示/違反報告)
赤信号(プロフ) - 更新します。 (2019年4月21日 23時) (レス) id: 674c6f2783 (このIDを非表示/違反報告)
学園運営者(プロフ) - 終わりました。 (2019年3月30日 11時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)
学園運営者(プロフ) - 連続で申しわけありませんが更新します。 (2019年3月30日 10時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)
学園運営者(プロフ) - 終わりました。 (2019年3月10日 23時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:時の政府(ニセモノ) x他8人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tekitouni  
作成日時:2019年1月23日 0時

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