第286話 暗雲の賭け ページ8
「悔しいよ、お兄ちゃん……負けないで」
震える声。
それに、炭治郎の動きが止まっている。
「あと少しだよ、鬼になんてなっちゃだめ」
「帰ろう、ね」
「家に帰ろう」
直後、耳を劈く叫び声。
これでもまだ止められない。
けど、もう分かった。
『(止める、絶対、……止める)』
倒すすべがないから、とか。
そういうのじゃなくて。
炭治郎は、禰豆子ちゃんと一緒に家に帰らないといけないんだ。
「炭治郎やめろ__っ!!禰豆子ちゃんだぞ!!元に戻ってる!人間に戻ってる!!」
「こんなことしたら死んじゃうよ!お兄ちゃんて呼んでるだろ!!」
俺に出来ることなんて、ひとつしかない。
俺がここにいる理由は、これしかない。
「ガーガー言うな!!禰豆子に怪我とかさせんじゃねぇ!!お前そんな……そんな奴じゃないだろ!あんなに優しかったのに……!元の炭治郎に戻れよォオオ!!」
伊之助くんの叫びの後、再び攻撃がしかけられる。
『……う、っ!』
地割れが起こり、耳鳴りが響く。
禰豆子ちゃんは炭治郎にしがみついたままだ。
このままじゃ本当に死んじゃう。
「誰も殺さないで!!お兄ちゃんお願い!!」
足が、動かない。
『(ううん、……動かなくたっていいや)』
自然と口角が上がった。
俺にとって出来ることの精一杯を出せるって思うと、自然と勇気が出てくる。
『君は、絶対に助ける』
「菖蒲!?何やって、____!」
俺の中に流れる血液は、特別なものだという。
しのぶさんに少しだけ聞いた。
単純に鬼に対して強いものでもなければ、稀血という訳でもない。
それが誕生したのがいつだったのか、なぜ存在するのか、それは、ずっと昔のことだから___もう知る術はないけれど。
血を流せば、稀血に似た効力。
けど少し違う。
『俺の体内に、どれだけ血液が残ってると思う?』
「!やめ____、」
誰かの叫び声のようなもの。
それが途切れた。聞こえなく、なる。
痛みなんて、もう、無いに等しかった。
斬りつけた刃により、肌から鮮血が飛び散った。
あとは、賭けだ。
君が勝つか、俺が勝つか。
『じしん、は、……ある、よ』
だって、君は、とっても優しいから。
炭治郎は、仲間のことが大事な人だから。
『(おれの、命は……)』
これもまた、賭けになるかもしれないけど。
『(こっちも俺が、……勝つからね)』
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リナ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» 一気読みありがとうございます〜!!完結間近ですが最後までよろしくお願いします!頑張ります……! (2020年11月28日 15時) (レス) id: cb61b31578 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 昨日このシリーズの小説を見つけたのですが、はちゃめちゃに面白くて今日読破しました!これからも頑張ってください!!! (2020年11月28日 10時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年8月29日 14時