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第297話 己の理解は及ばず ページ19

『わけわかんねぇな、あの人』

「……」


そして我妻くんと2人っきり。
今までなら別の意味で居心地が悪かったんだけど。
今はちょっと違う。


『おーい我妻くん。死んだ?』

「菖蒲、笑って」

『じゃあ面白いことしてよ』

「いや、そうじゃなく……」


言いづらそうにした我妻くんは、焦ったように俺の服の裾を引っ張った。7歳児かな。


「いつもみたいに、笑って」

『そんなの出来てたらとっくにやってるじゃん。……それに』

「……?」

『……あー…………やっぱそうか』


彼の手を何とか振りほどこうとする。
えっ力強くね????なに???どういうつもりで俺の服をシワッシワになるまで掴んでるんだ!?!?


「絶対放さないから!!逃がさない!!部屋には戻さないからな!!」

『お前マジで何を原動力に動いてんだよ!?鬼ごっこでもしてましたっけ!?』

「今なんか気づいたみたいな音した!!いつもと違う音!!それを俺に言うまで放さない!!」

『〜〜っ!』



あーもーコイツ!!
ホント厄介!!耳が良かったり鼻が利いたり勘が鋭かったりするヤツら!!

なんでこんなヤツらに捕まっちゃったかなぁ、……こんな、優しすぎる人達に……。



「あれ、菖蒲さん?」

「菖蒲?外に出ていいのか?体調は大丈夫なのか!?」

「アヤメ!!元気になったのか!?ドングリいるか!?」


禰豆子ちゃん、炭治郎、伊之助くん。
我妻くんと格闘していれば、3人が騒ぎを聞いてやって来た。

きっと、ここ、なんだろう。




『気づいたよ……俺』









『俺、幸せになっちゃダメだ、って。そんな馬鹿なこと、思ってるんだ』



ぽつり。ぽつり。
言葉が降る度に、涙がこぼれおちた。

相変わらずうまく表情は歪まないけれど、あれ以来初めて表に出た感情の塊が、この涙だった。


「菖蒲が今、生きているのは」

『うん。あやめが代わりに死んだから。おかしいだろ、あの世界で幸せに生きるはずの子が、無関係に死んじゃうなんて』


それでも俺は、あやめの覚悟を無下には出来なかった。
だから謝って、感謝しちゃった。
でも、認めたわけじゃなかったから。


己の中でぐちゃぐちゃに渦巻くそれを、行き場のないそれを箱に詰めるみたいにしまいこんだ。

禰豆子ちゃんが陽の光を克服したあれ以前みたいに、学習しない俺は、見たくないものから目を逸らした。
大丈夫だって、思い込んだ。


『他人の幸せを奪って生きる俺がさ、のうのうと幸福を手にするなんて……おかしい』

第298話 代わりじゃない人→←第296話 動かなくなったものは



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リナ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» 一気読みありがとうございます〜!!完結間近ですが最後までよろしくお願いします!頑張ります……! (2020年11月28日 15時) (レス) id: cb61b31578 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 昨日このシリーズの小説を見つけたのですが、はちゃめちゃに面白くて今日読破しました!これからも頑張ってください!!! (2020年11月28日 10時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2020年8月29日 14時

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