第７話 ページ7
「むぉやすぅみゅ」
疲れからか、ベッドに入るとすぐに瞼が下りてきてしまったよう。すぅすぅと可愛い寝息をたて始めた。
それにしても驚いたわ。この子に出会ったのは数日前。仕事からの帰宅途中の住宅街で倒れていたのを私は見つけた。
見たところケガは見当たらないけれど、とても痩せていて顔色も悪かった。とにかく病院へ。
とりあえず入院、ということになってひとまず仮の身元引き受け人になることを了承した。この子の親戚か誰かがすぐ見つかればそれはそれでよい。だけど…、その時は見極める必要がありそうね。
暫くすると彼女は意識を取り戻した。しかし様子がおかしい。こちらの問いかけには一切応じないし、何かを話そうとしたのか口を開いたけれど、そこから言葉は発しなかった。いや、出来ないように見えた。
病院の検査結果で視覚や聴覚等々の異常はない、ということはなんらかの理由で話すことができないのか。
検査を終えた彼女は不安そうな目をしていた。だから私はなんとか不安を取り除いてあげられないかと考えながら、とりあえず現状を話してみる。だがやはりわかっていないみたいだ。
あ、そういえば。まだ私の名前すら言っていなかったわ。
私は自分の名を言うと、彼女は赤子のように私の名前を言った。よかった、まったく意志疎通ができないわけではないみたい。それから彼女も名前を教えてくれた。Aね、可愛らしい名前だわ。
そしてやはり、Aの身元はわからなかった。退院の日、私はAを迎えに行った。とても不安そうな表情で身仕度を整えているAを見ると何故だか胸が締め付けられるような気がして、病室を出て私は思わずAの手を自分と繋ぐ。
大丈夫、私がついているから。
思わずAの頭を撫でる。すると少し表情が和らいでくれるのが少し嬉しい。
私は少しでもAに笑ってほしい。まだ出会って数日しか経っていないけれど、とろとろに甘やかしてあげたいと思ってしまう。いいの？っていう顔をしながら欲しいものを選んでいるA、可愛いのよね。
「これからよろしくね」
小さく呟いて、私も眠った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
遊星(プロフ) - 璃々さん» 分かりました。更新再開お待ちしてます。更新頑張って下さい。 (2022年8月21日 23時) (
レス) id: ae3c532d92 (このIDを非表示/違反報告)
璃々(プロフ) - 遊星さん» 楽しみにしていただいて嬉しいです。ありがとうございます。毎日更新はできないかもしれませんが、なるべくがんばりますね！ (2022年8月21日 14時) (レス) id: d7238d7d87 (このIDを非表示/違反報告)
遊星(プロフ) - 更新停止になってますが大丈夫ですか？素敵な話なのに更新停止は勿体無いです。早く続き読みたいです。 (2022年8月19日 22時) (レス) @page7 id: ae3c532d92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃々 | 作成日時：2022年8月13日 17時
