第３４話 ページ34
ふと目が覚めて、見えたのは真っ白な天井だった。
見覚えがある白。
これは……、夢で見た真っ白な天井！
がばっと起き上がり辺りを見ると白い壁、そしてスピーカーやマイクスタンドが見えた。
そして何より私の心拍数を上げたものは、首、手首足首に付けられた黒いリングだった。
ひんやりした金属の冷たさと、さっき見た夢を思い出し寒気がした。
それから私は気がつく。自分の足下に夢で見た"あの子"がいたのだ。そして私と目が合うと満面の笑みを見せ、
「メロエッタッ！」
「え、きゃぁ！」
勢いよく飛んできた。受け止めきれず押し倒される。小さな腕を私に回して、お構い無しに頬擦りしてくる。
『もう会えないかと思った。どこに行っていたの』
なんとなく、その子がそう言っているように思えた。
人形の……ポケモンでいいのだろう。小さな子どもみたいで可愛いくてどこかいとおしい。私はゆっくり頭を撫でた。そして伝えるべきか迷った。
でも隠したって仕方ない。隠してもすぐにわかってしまうだろう。だから言うことにした。
「ねぇ、私はもうあなたが知ってる私じゃないの。たぶん、前の私、あなたが知る私は…たぶん…死んじゃった……」
頬擦りをやめて私を見る。話が理解できていないのかと思ったが、だんだんとその子の目には涙が浮かんできた。
そして私からゆっくり離れて距離をとる。私の足下まで来ると悲しそうな声で言った。
「メロ…？」
『本当に？』と何故か言っていることがわかる気がする。
「本当に」
私は静かに、でも目を逸らさずに答える。
『でもあなたはフィーネの顔してる！』
「この身体の子は"フィーネ"と言うのね。…何故だかわからないけれど、気がついたら私がこの子の身体に入っていたの。でも、今この身体は"A"よ。フィーネじゃない」
『ウソ！じゃあ私のことも何にもわからないの!?』
「……ごめんなさい、夢で、フィーネの記憶を少し見たくらいしかわからないわ」
ポケモンのその子は浮かべた涙を溢した。頬に涙が伝った。
私は思わず抱きしめそうになって、止めた。だって私にはそれができる資格なんてないから。
手を取ることにも責任が伴う。
そう考えるとシロナはやはり凄いな……。
「……ごめんね」
私は小さく、呟くように言った。
目の前の子は小さく嗚咽をあげていた。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←第３３話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
遊星(プロフ) - 璃々さん» 分かりました。更新再開お待ちしてます。更新頑張って下さい。 (2022年8月21日 23時) (
レス) id: ae3c532d92 (このIDを非表示/違反報告)
璃々(プロフ) - 遊星さん» 楽しみにしていただいて嬉しいです。ありがとうございます。毎日更新はできないかもしれませんが、なるべくがんばりますね！ (2022年8月21日 14時) (レス) id: d7238d7d87 (このIDを非表示/違反報告)
遊星(プロフ) - 更新停止になってますが大丈夫ですか？素敵な話なのに更新停止は勿体無いです。早く続き読みたいです。 (2022年8月19日 22時) (レス) @page7 id: ae3c532d92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃々 | 作成日時：2022年8月13日 17時
