ハマの人たちと。【ヒプマイ短編集】

【左馬刻２】 ページ34

「…A、終わったぞ。」


男を倒し終えた後、
こちらへと寄ってきて、縄を解いてくれる左馬刻。

…ふわり、と鉄のにおいがした。


彼を見上げると、少し辛そうな表情をしていて。

そういえば、頬につけられた傷…
顔だから、余計に目立つのか…。

左馬刻がその頬に触れてきて、
彼がそれを気にしていることが分かり、どんな顔をしていいのか困る。


　「…痛ぇか」


　『…少し、だけ』


今までは、緊張感とかもあって、
それどころじゃなかったのか、痛みもあまり感じなかったけど。

左馬刻が来てくれて、もう大丈夫だと思ったら…
思い出したかのように痛み始めた。


…何で彼の前でも強がってしまうんだろう。
弱い私じゃ…認められないと思ってるから…？


　「…悪いな」


　『っ、』


腫れ物に触るかのように、
そっと抱きしめてくれる彼に、思わず泣きそうになる。

その彼の手が少し震えているのが分かって。

…何で…


　「それ、しばらく残んだろ。しかも顔…。悪かった、本当に。」


いつもより、幾分か優しい声色で言ってくる。

それに感化され、思わず涙が溢れてきた。
止めようとしても、もう遅くて。


　『っ、ぅ…ぐすっ…』


　「…ん、怖かったな。もう大丈夫だ。」


呆れられるかと思ったけど、
左馬刻は抱き締める力を強めてきて。


……やっぱり、好き、だなぁ。


リズムよく、軽く背中を叩いてくる彼の手に、
今までどれだけ救われたことか。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


　『…も、大丈夫。ありがとう』


結局、彼は私が落ち着くまで背中を擦ってくれていた。

この人なりに…心配とか、してくれてたりするのかな。


　「…そーかよ。なら帰んぞ。
　 銃兎も呼んである、放っといても大丈夫だろ。」


　『うん』


腕を引かれるがままに立ち上がる。

もう、手は震えていなかったけど。
いつもよりも、握る手の力は弱くて。


　『…可愛い』


ふと、そんな言葉が口から出ていた。
ああ…何言ってるんだ、私…


　「あ”ぁ？ナメたこと言ってっと置いてくぞ」


先程まで掴んでいてくれた手を放し、そう言い放たれる。


　『ぇっ、やだ！ごめんなさい私が悪かったから！』


慌てて早口でそう言うと、彼はいつもように、ハッ、と笑って。


　「立ち直り早すぎだろ。流石は俺様の女だな」


満足そうに頭を撫でると、
今度は手を握って歩き始めた。

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