ハマの人たちと。【ヒプマイ短編集】

【銃兎】 ページ31

ガチャッ、という音で、彼が帰ってきたことを把握する。


　『…あ、お帰り銃兎』


　「はぁ…不法侵入だぞ。しょっぴくぞ。」


家に帰ると私が居ることが、
回数を重ねすぎたせいか当然のようになってしまって。

彼は「またか」とでも言いたげに呆れた視線をこちらに向けてくる。

いつからか、彼は私に敬語を使わなくなった。
とはいえ、仕事モードであれば敬語のときもあるが。


　『いーよ？銃兎サンの管轄内がいーなー』


　「アホ。豚箱に入ったら関係ねぇだろ」


　『えー…』


彼の職権乱用というものはすさまじい。
まあ、先程の私に対しての発言は、冗談でもなきゃやってられないけど。


　「ったく…

　 お前はそれで案外キレるんだから、そんな口調だとナメられるだけだぞ。

　 仕事中でもあるまいし、ここじゃ人目につかない」


彼が、そんな当然なことを言ってくる訳とは。
私たちの、関係にあるわけで。


　『…お疲れ様です。今日も一日、愛想笑い。

　 よくやってられるよな、そんなの。

　 私には耐えられそうもないんだけど。』


私たちは、表面上は恋人という関係。
だが実際は、本性を曝け出して愚痴などを言う関係。

世間的には、少々アホとして扱われている私だが、
この空間では、愛想の悪い、やさぐれているとも捉えられるような女。

こういった、ストレスの発散場所がなければやっていけない。


　「その言葉、そっくりそのまま返すぞ。

　 …お前のその切り替えの早さは尊敬する。」


　『別にボロ出すわけでもあるまいし。

　 私は結構、警戒心強いほうだと思うけどね』


銃兎に比べると、私はあまりデキる人間じゃない。
しっかりと区別をつけておかないと。


　「左馬刻や理鶯の前でくらい、そっちでもいいと思うんだが。」


　『私は銃兎と違って、ストレスは常に吐き出す人だから。

　 これ見せるのは銃兎だけでいいよ。
　 あまり多くするとボロが出そう。一線は引いておくべきだよ。』


ハタから見たら、黒い大人の作戦会議みたいなものなんだろうけど。

私は、この空間が何よりも落ち着けるんだ。


…だから、


　「お前、案外俺のこと好きだよな」


　『はっ、自惚れるなよ』


…まさか、先に言われるとは思っていなかったけど。

戸惑わないように、見せられただろうか。


　「違うのか？俺は好きだぞ」


　「……っ…！？」


まさかの発言に、固まってしまう。

突然そんなことを言ってくるとか、ずるいよ…

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