ハマの人たちと。【ヒプマイ短編集】

【理鶯】 ページ22

「A、そろそろ飯時だろう？小官が何か振る舞おう。」



理鶯のところに遊びにきていたとき、
唐突に、彼からそんなことを言われる。


…やばい、どうやって回避しよう。


　『え、あー…はは…
　 ごめん、私ここに来る前に食べてきちゃって…』



…以前も同じようなことを言った気がする。
そろそろ、彼も何か思ったりしないだろうか。


いくら彼が天然で、少々疎いとはいえ、
こう何度も拒否していては、何かしら気づいてしまうのではないだろうか。



　「…小官の料理は嫌いか？」


　『…えっ』



少し間があったかと思えば、眉を顰めてそう聞いてくる。


どうしよう、何て言えば…



　「…無理はしないでくれ、愛想笑いをされても嬉しくはない」


　『いや、嫌いとかじゃ、なくて…』



確かに、美味しいことには美味しいんだよ。

だから、嫌いっていうわけではないんだ


少し、苦手なだけであって…



　『あの…ごめんね？なんて言うか…

　 すごく美味しいんだけど、見た目がちょっと…エグイというか…』


　「…？ 見た目…」



私の発言を受けて、理鶯は顎に手を当てて考え込む仕草を見せる。
やはり当人に自覚なんてないらしい


自覚以前に、彼にとってはこれが普通なのか。



…まっとりで町に出て、ご飯に行くときとかあるだろうに。

そういうときに、気付いたりしないのかな。
まさか自分がおかしいとは思わないものか…。



　『理鶯って、具材に動物とか虫とか使うでしょ？

　 それって、私みたいな一般人にとっては、あんまりないことだから…

　 ちょっと抵抗感があるっていうか…』



あんまり、こういう言葉を並べたところで、
理解してくれるような問題じゃないと思うんだよね


それで解決できるのなら、
左馬刻や銃兎がとっくに説得してる話だし。


ただ、彼が傷つくことだけはどうしても避けたい
どうにかフォローできないものかと、必死に言葉を探すけど…



　「しかし、貴女も肉くらい食べるだろう？」


　『うぅ…そうなんだけど…』



そうだけど、そうじゃなくって…！


やっぱり無理だ、私が彼の考えを変えようだなんて間違ってた。



　「…済まない、話し合いでは時間をかけてしまうな。

　 A、今日の食事は一緒に作ろう。教えを乞う。

　 気になるところがあれば遠慮なく言ってくれ。」



それはつまり、私の話は理解できなかったってことで。


…でも、理解しようとしてくれる辺り、優しいなぁ、と。

１０．違法マイク【左馬刻】※リクエスト作品→←【銃兎】

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