ちょっとワケアリな新婚夫婦３

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「はい、じゃあちょっと失礼しますよ〜。」

私の目の前に座っていた磯村さんが両足で私を挟み込むようにして身を寄せて来た。

『え、ちょ、近っ…』

「近付かないとメイク出来ないから。」

何だかプロスイッチが入ってしまったのか真剣な声色をした磯村さんの声が正面から聞こえてくる。

『……早く終わらせてください。』

とりあえず両目をぎゅっと瞑る事で素敵なお顔はシャットアウトしておこう。

『っ、』

突然冷たいものが頬に当たってビクッと肩が跳ねた。

「あ、ごめん、下地クリーム。てか目開けときなよ。」

『だ、だって磯村さん近いんですもん…。』

そろそろ…、と目を開けてみる。

「ふふ、ほっぺた熱い。」

両頬と額、顎、最後に鼻の頭にクリームをちょん、と乗せられる。

「広げまーす。」

磯村さんの指が顔を滑るようにしてクリームを広げていく。

「今日はグリーンベースね。」

『え、そんなの私は持ってましたっけ？』

「これは俺の。お気に入りのコスメだけは現場に持って行ってるんだよ。」

『な、なるほど…。』

うーん、分からない世界。

「最後に首に塗るね。触って大丈夫？」

『大丈夫です…、…下地って首にも塗るんですね。』

「んー、これやっとくと顔が明るく見えるからね。……はい、次ファンデーション。」

テーブルの上にあるファンデーションは５つ。私のもの３つに磯村さんのもの２つ。

「２つ未開封のファンデーションあるけど、何で使ってないの？」

『あ、それ誕生日プレゼントで貰ったんです。でも今使っているやつが残ってるので。』

「なるほどね…、今使ってるファンデーションよりこっちの方が明るく見えるから開封しちゃっても良い？」

『あ、もうそれは是非。』

もう何が何だか分からないから好きに使ってください。

「…Aってさ、ファンデーションの色どうやって選んでる？」

そう問いかけながら、片手で軽く頬を引っ張ってリキッドファンデーションを塗っていく磯村さん。

『無難に標準色を…。』

「だよね。Aは色白でブルーベースだからピンク系のライトカラーの方が似合ってるよ。たぶんこれをくれた人もそう思ったんじゃないかな。」

『ほぇぇ…』

頬を軽く引っ張られているので喋りにくいが、かなり感動している。ファンデーション一つ取っても奥深いんだなぁ。

「あとリキッドファンデーションを塗る時は少し頬を引っ張るようにして薄く塗って、おでこは眉間から放射線状に広げていく。」

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