〝平和〟が一番似合わない町【名探偵コナン】 (ページ7)

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　ここ数分の内にこの道を歩いたのは、合計四人。私、毛利、恐らく工藤、もう一つは不明。

　ついさっき付けたばかりの私達の足跡はほとんどが土砂降りの雨によって流されていて、コンクリートの小石が少し転がっているくらい。
　誰が付けた分からない足跡は何故か少し水がはけており、よく見れば細い繊維が落ちていた。これは私の予想だが、靴底が布製の……恐らくスリッパか何かを履いた人物がここを歩き、地面の雨水を吸収したのだろう。何故スリッパでここを歩いたのかは分からない。
　そして、工藤のものと思われる足跡。ここら辺は全て道が舗装されていて、普通に帰って来たのなら私と毛利ものの様に少量の小石だけが残る。だが、工藤の足跡はそれとは真逆、泥だらけだった。これは、舗装されていない場所を歩いたという証拠。でも、何故わざわざそんな所を通ったのだろう。

　疑問は募るばかりだが、生憎それを解き明かす様なヒマはないので一旦無視する。後でじっくり考えれば良い。
　私は差していた傘を閉じ、工藤宅へとお邪魔した。玄関ホールに来るも、やはり違和感を覚えて仕方がない。履き捨てられた泥だらけのスニーカーと揃えられたびしょ濡れのスリッパを一瞥してから、私も靴からスリッパに履き替えた。奥の書斎を目指して、ずんずんと進む。

「おっ邪魔しまーす。」

　そう告げてから無駄に重い書斎の扉を開ける。と同時に、三つの視線が私に集まるのを感じた。視線を辿り、その人物らを確認する。

「毛利に博士に……あ、さっきの子供。」
「え？この子のこと知ってるの？」
「毛利と会うちょっと前に走ってんの見ただけだけどね。」

　毛利の疑問にそう答え、軽く博士に挨拶をしてから子供の近くまで行った。先程とは違い大きめな眼鏡をかけているが、やはり小さい頃の工藤にしか見えない。そう思ってジーッと見ていれば、「な、なに……？」と困惑気味に訊かれた。

「君、名前は？」
「え、江戸川コナン……」
「江戸川コナン？………えっと、個性的な名前だね。」
「アハハ……」

　「やっぱり、この子変な名前よねー」と言う毛利に共感の意を込めて頷く。再び、工藤似の子……コナン君が苦笑いした。

「それより新一はー？」
「さ、さっきまでいたんじゃが、なんか用があるって外に……」
「ふーん……」

　何やら焦った様に説明した博士に私の抱いていた違和感は募るが、工藤のスニーカーがあるという矛盾点への疑問を上回ることは無かった。