〝平和〟が一番似合わない町【名探偵コナン】 (ページ6)

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　毛利探偵事務所のある大通りを歩いていたとき、前から走って来ている人物に気が付き、思わず声を上げた。

「……あれ？毛利？」
「A……！」

　私に気が付いた様子の毛利は、差している傘を忘れる様な勢いで駆け寄って来ると、今にも泣きそうな表情で言った。

「どうしようA！遊園地で別れたっきり、新一と連絡がつかないの！新一、変な黒ずくめの人を追いかけてどっか行っちゃって……あの後、何かあったんじゃないかって心配で……」
「落ち着いて毛利。ホラ、深呼吸深呼吸。」
「う、うん。」

　真っ青だった毛利の顔が少し落ち着いたのを見計らって、何があったのかを訊いた。

「………なるほど。いかにも怪しげな男を追って行ってから連絡が途絶えてるから、生存確認の為に工藤ん家に行く訳ね。…………それ、私も行っていい？一応、友達のひとりとして心配でね。」
「うん、ひとりじゃ心細かったから……」
「じゃあ行こっか。」

　私は涙目で頷いた毛利の手を引き、来た道を途中まで引き返した。試しに工藤の携帯に電話をかけてみたが、やはり彼女の言う通り、繋がらない。諦めて、工藤の家に着くまで待つことにした。

　工藤宅の前まで来たとき、隣の阿笠博士の家の塀が破壊されていることに気が付いた。毛利が「え」と小さい声を零す。私も一瞬強盗か何かかと焦ったが、よく目を凝らすと壊れた発明品があったので自爆だということが分かった。また失敗でもしたのだろう。

「あれ。工藤の家の書斎、電気点いてない？」
「ホントだ……帰ってるのかな……」
「確認してみよ。」

　私達は、やたらに大きい門扉を開き、敷地内へと足を踏み入れた。毛利が少し小走りで家の扉まで行き、恐る恐るノブを回す。ガチャリ、と音を鳴らしてゆっくりと扉は開いた。

「鍵、開いてるね。」
「私、ちょっと中見て来るわ！Aはどうする？」
「……………ごめん、気になるところ見付けたから先行ってて。工藤の生存確認よろしく。」
「分かった！」

　毛利は先程とは大違いな様子で頷くと、傘を閉じて中へと入って行った。「新一、いるのー？」という声を背中に、私は門扉から玄関前までの道を屈んで観察した。この状況、なにかが可笑しい。