傷を抱えた私達は (ページ30)

今日:4 hit、昨日:27 hit、合計:20,345 hit

・ページ30

『柊生、泣かないでよ』

ぽろぽろと涙を流しながら笑っていたから

[あれ？おかしいな。俺に泣く資格なんてないのに]

必死に涙を手で拭う柊生にハンカチを差し出す

たとえどんなに毎日笑ってる人でも、幸せそうに見える人でも

何を抱えているかなんて分からない

心に傷を抱えていない人なんていないのかもしれない

『私から見た2人はお似合いでお互いを想いあっているように見えるよ』

こんな言葉じゃきっと何も伝わらない

自分のボキャブラリーが少なくてもどかしい

『今度からさ、私にも柊生を助けさせてよ。一方通行じゃなくて私も柊生を助けたい』

いつも色んな人に守られてきただけだから、こんな時にかける言葉が見つからない

それでも柊生は優しい笑顔で

[ありがとな]と言ってくれた

[じゃあ、杏部活終わったみたいだし俺帰るわ]

『うん。また明日ね～』

1人歩く帰り道で、柊生は過去の出来事に囚われて今が見えてないんだなと思った

あんなにも柊生の隣にいる杏は幸せそうなのに

草川くんのことを聞かれた時の杏は特に動揺なんてしてなかったから、完全に吹っ切れているだろうに

自分に自信がないのと、過去に脅えて今が見えてないんだ

私も草川くんも過去に囚われてるけど、また柊生は違うタイプ

どうしたらいいのか私にはわからなかったけどたぶん、杏と柊生がちゃんとしっかり話し合わなきゃ解決しないんだろうなと思った

それとなーく杏に、話してみよう

そう決心して2人が幸せにこれからも続くことを願った