♯ ページ21
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1粒の涙が頬を掠める。Aの目は少しずつ赤くなって、1粒、また1粒と大粒の涙を流す。
「ほんと馬鹿。何で今さら歳なんて気にしてるの?」
『……っ、だって、っ』
しゃくりあげて泣いているAは子供みたいだ。
「1歳しか変わらんやん。A童顔だし制服脱いだら俺の方が年上に見られるんだから、気にする必要ないじゃん」
『童顔って言うなあっ……!』
そこははっきり言い返すんだ。
でも童顔でちっちゃくて未だに中学生に間違えられるけど、誰よりも真面目で優しくて努力家なAが好き。
「俺もAも好きだから付き合ってる。誰に何言われてもこれでいいんだよ」
そもそもこの付き合いは高校からの延長なんだから、問題なんて1つも無いはずだ。外野の言うことなんて気にしないでほしい。
また涙を浮かべたAはごめんね、と勢いよく抱き着いてきた。
すっぽりと収まる小ささにまた面食らう。弱々しい彼女の背中を優しく抱きしめ、撫でた。
『亮、好き……』
告白した時以来、久しぶりの言葉に胸が詰まる。目の奥がツーンと刺激される。
「もう無視しんでね。しんどかった」
『……ごめん』
「自然消滅もしてない」
『うん……』
もう絶対に離してやらない。その一心で強く抱きしめた。
『ううっ、苦しい……』
「彼氏をいじめ抜いた罰だよ」
柔い温もりに触れた瞬間、我慢していたものが溢れる。ずっとこうしたかった。振られたらどうしようかと不安だった。他に男がいたら……
Aが落ち着くのとは逆に、ジワジワ目の奥が熱くなる。
『亮……?』
「Aが、悪い……っ」
1度流れると収まることを知らない。その肩に顔を埋める。静かに背中を撫でられながら、Aに触れられる幸せを感じ今までの寂しさを涙に流した。
・
『作り置きでいい?』
「いいよ。めっちゃ美味そう!」
日付が変わる。風呂から上がるとローテーブルにはAが作ったらしいカレーが1皿出来上がっていた。
1人暮らしのワンルームは2人で過ごすには狭く、隣に座ると肘と肘が触れ合ってしまう。でも今はこの狭ささえも愛おしい。
「明日も泊まっていい?」
『いいよ』
「よっしゃ!」
『明後日帰るん?』
「うん」
『じゃあ一緒に帰ろっか?』
Aは嬉しそうにショートケーキの苺を食べた。
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あおやなぎ(プロフ) - AYN98036518さん» 初めまして、ありがとうございます! これからもこの作品をよろしくお願いします(^^) (2021年1月5日 15時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
AYN98036518(プロフ) - 面白いです!面白すぎます!頑張って下さい!続き楽しみに待ってます!!!!!!! (2021年1月4日 12時) (レス) id: 12406a430a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年5月14日 22時