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「あの…ごめんなさい。私やっぱり、帰る…」




「…えっ?」





呆れたような顔で言われて、一瞬身体が硬直してしまった。



ずっと、私のノリの悪さにイライラしながら、なんとかヘラヘラ笑顔を保っていたんだろう。



私の今の発言で、その演技が一気に剥ぎ落とされた感じがあった。





「…いやいや、もう部屋代も払っちゃったし」




「お部屋代はちゃんと返すから」




「そう言われてもさぁ…」





頭をタオルでわさわさ拭きながらベッドに腰掛ける同僚。





「今そういうこと言うならさぁ、最初から遊ぶのも断ってくれりゃいいじゃん?何で今更言うわけ?」




「……」




「外見好みだったから誘ったけどさぁ、こういうの無理ーみたいなタイプなんだったら普通に他の子誘ったし」




「…ごめんなさい」




「あーあ、一日無駄にしたわぁーマジふざけんなよ」





ベッドに仰向けに倒れながら、これでもかというほど嫌味を込めてそんなことを言われると、泣きたくなった。





「…ごめんなさい」




「じゃあ挿入()れはしないからさ、咥えろよ。そんくらいはいいだろ」




「…したく…ないです…」





同僚は大きくため息をつく。





「あぁ、そう。じゃあ帰れば。キモおじにレ○プでもされて死んどけよ」





床に置いていた荷物を持って、急いで部屋を出る。



心臓はバクバクで、喉の奥の方が熱くて痛くて、手も震えていた。



でも不思議と、気持ちはすっきりしていた。



新宿の汚れた空気も、今は綺麗に感じた。











結局タクシーを呼ぶこともせず、40分夜中の新宿を歩いていて家まで帰った。


変な人に絡まれることもなく帰れた。


家に着いたときにはもう2時過ぎだった。




玄関を開けて中に入ると、台所のところだけ明かりがついている。



玄関が閉まると同時に、水の入ったコップを片手に持った鹿紫雲さんがひょこっと顔を出した。





『変な時間に帰ってきたな』





いつもの調子でそう言う鹿紫雲さんは、台にコップを置いて、いつまでも玄関に突っ立っている私の方にスタスタ歩いてくる。





「…今日はね、」



『……』



「ちゃんと、断ったんだよ。…まあ、散々酷いこと言われたけど…」





私が下を向いてそう言うと、暖かくて大きい手が私の顔を包む。


上を向くと、鹿紫雲さんが嬉しそうに笑っていた。





『頑張ったな』





そして私のほっぺたを軽くぺちべちと叩いて、彼はそう言った。

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設定タグ:鹿紫雲一 , 呪術廻戦
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ヤハウェ(プロフ) - 由良の門をさん» そういう先輩っていうのは社会にごろごろいますから気をつけていきましょうね‼️鹿紫雲たんみたいなのが一家に1人いれば、日本社会はもっとマシになるはずであります…応援あざむぁす! (2月19日 14時) (レス) id: 3429f701c5 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - うみさん» ありがとうございむぁす‼️いい話ですよね😍オイラも好きですよ✨ (2月19日 14時) (レス) id: 3429f701c5 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - 企画を丸投げする先輩共腹立つと同時に、鹿紫雲の優しさが主人公にしみますね・・・!更新楽しみです!頑張ってください!!!! (1月15日 23時) (レス) @page17 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 作者さまの小説の中でこの小説が1番好きです!鹿紫雲目線と主人公ちゃん目線の書き方、文章の表現が素晴らしいです…好き! (11月29日 21時) (レス) @page23 id: d6837fdd33 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - あわさん» そう、鹿紫雲ちゃんは最高なのですよ!!沼れ!沼れ!いや、もう沼っているはずだお。この小説を読んだことがその証拠さ… (2023年4月13日 0時) (レス) id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヤハウェ | 作成日時:2022年12月3日 0時

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