第1章 ページ2
____3週間前
「ッ!!やめてよ!!」
「うるせぇゴミ女!!このくらいで済むと思ってんのかよ!?」
…痛かった。
男の人に殴られるのは、どんなに歯を食いしばっても痛い。
肉体的にやりくるめられると、自分は悪くない、この暴力は理不尽だ、と分かっていても
怖くなって抵抗できなくなってくる。
「チッ……血がついた」
私の傷から出た血が、彼の拳に着いてしまったようだった。
彼はブツブツ文句を言いながら洗面所に向かう。
・
…彼が洗面所に行ってから、もうかなり時間が経った。
洗面所からは物音一つしない。
様子を確かめに行って、またそれでキレられて殴られたりしたら最悪だけど
あまりにも長い間出てこないから、流石に失神してるんじゃないかと思い始めて、洗面所のドアを開けに行った。
まあ別に失神してたらそれはそれでいいけどな……
恐る恐るドアを開ける。
私がそこで見た光景は、全く予想外のものだった。
「…え、誰」
そこにいたのはさっきまで私を殴っていた男じゃなかった。
…全く知らない男だ。
知らない男と鏡越しに目が合って、その男はこちらを振り向く。
……女みたいな顔。
ふさふさのまつ毛に、キリッとした眉。
見てると目が痛くなりそうなミントグリーンの髪。
どことなく、儚い雰囲気。
肩下まで伸ばしてある髪は外側にぴょんぴょんと跳ねていて、無造作だった。
しばらく動けずに、ただ呆然と佇んでその男を見つめる。
ここにいたはずの元彼はどこかへ消えて、全然知らない男が家にいることへの驚きもあったが
彼があまりにも綺麗な顔立ちをしていたから見惚れてしまった。
瞳の色は髪と同じで、まるでエメラルドがキラキラ光っているみたい。
すっと鼻筋が通っていて、どちらかといえば西洋人らしい顔立ちで、白くて陶器みたいな肌。
着ている服をよく見ると、さっき私の元彼が着ていたものと同じだった。
安そうな、ダサいパーカー。
でもこの人が着ていると、何だかこだわり抜かれたお洒落な一品のようにも見えてくる。
細身だけど、しっかりした筋肉が身体を覆っているのだろうということが、何故か服越しにも分かった。
『…お前、』
女みたいな見た目に反して、低くて落ち着いた声。
『
「はい?」
これが、私とあたおか男の最初の出会いだった。
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ヤハウェ(プロフ) - 由良の門をさん» そういう先輩っていうのは社会にごろごろいますから気をつけていきましょうね‼️鹿紫雲たんみたいなのが一家に1人いれば、日本社会はもっとマシになるはずであります…応援あざむぁす! (2月19日 14時) (レス) id: 3429f701c5 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - うみさん» ありがとうございむぁす‼️いい話ですよね😍オイラも好きですよ✨ (2月19日 14時) (レス) id: 3429f701c5 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - 企画を丸投げする先輩共腹立つと同時に、鹿紫雲の優しさが主人公にしみますね・・・!更新楽しみです!頑張ってください!!!! (1月15日 23時) (レス) @page17 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 作者さまの小説の中でこの小説が1番好きです!鹿紫雲目線と主人公ちゃん目線の書き方、文章の表現が素晴らしいです…好き! (11月29日 21時) (レス) @page23 id: d6837fdd33 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - あわさん» そう、鹿紫雲ちゃんは最高なのですよ!!沼れ!沼れ!いや、もう沼っているはずだお。この小説を読んだことがその証拠さ… (2023年4月13日 0時) (レス) id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤハウェ | 作成日時:2022年12月3日 0時