第12章 ページ1
……こんなこと、言うつもりじゃなかった。
言うつもりじゃなかったのに、心の中に溜め込んでいたものが全部言葉になって流れ出て、収集がつかないところまで来てしまった。
…お酒って怖いな。
鹿紫雲さんは、こんな風に女に重たく執着されるの、嫌だろうな。
嫌われたかな。
泣きべそかきながら、そんなことを考える。
でも今じゃなかったとしても、きっといずれ
こんな風にヤケになって告白する時が来ていただろう。
だって私は鹿紫雲さんのことが好きだし、どこにも行ってほしくないし、私以外の女の子に優しくしてほしくないし
私と同じ気持ちでいてほしい。
私はわがままだから、この望みをずっと心に押し込めたままではいられない。
泣きべそかきながら、世にも惨めな告白をした。
鹿紫雲さんの顔は見れなかった。
このまま何も見ないまま、逃げたいと思った。
まあ、逃げれるわけないんだけど。
すると突然、鹿紫雲さんにグイッと腕を引かれる。
反射的に抵抗した。
手つきが優しかったから、弱っちい私でも力で抵抗できた。
でも次は無理だった。
腰に回ってきた腕がガッチリ私の身体をホールドして、抵抗のての字もできないまま鹿紫雲さんのフィールドに連れて行かれる。
涙でべちゃべちゃになった私の頬に、鹿紫雲さんの手が触れた。
あったかくて、大きくて、私の頭蓋骨とか簡単に粉砕できそうな、そんな手だけど
私に触れる時はいつも慎重で、優しくて
私のことを勘違い女にさせる手。
『…ごめん』
…私、フラれたんだ。
そう思った。
申し訳なさそうな鹿紫雲さんの声色に、何故か私が申し訳なくなった。
私がわがままで想いを伝えちゃったせいで、困らせちゃった。
私は顔上げて鹿紫雲さんの顔を見た。
涙で霞んだ視界に映った鹿紫雲さんの顔は、やっぱり綺麗で、カッコよくて
こんな人を好きになるななんて、そんな無理難題を女に押し付けんなという謎の悔しさと
フラれた悲しさと、自分の情けなさと
色んな感情が混ざって、また鹿紫雲さんの顔が涙のせいで歪んでいく。
目を瞑ると、溜まっていた涙がこぼれ落ちる。
鹿紫雲さんの親指が、私の下瞼をなぞった。
『ずっと、好きだって言ってやれなくて、ごめん』
考えれば考えるほど、分からなくなる真意。
心臓ばっかりがドキドキして、息の仕方すらも
分からなくなりそうだった。
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ヤハウェ(プロフ) - ユイさん» ありがとうございまぁす‼️話はまあひと段落はしておりますが、まだおまけ程度のものは書こうと思っておりまぁす‼️キャラが魅力的…最高の褒め言葉!恐悦至極であります🎵 (2月19日 14時) (レス) id: 3429f701c5 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - とても素敵な作品でした。区切りが綺麗なもので、これで完結なのか、続きがあるのか分かりませんが、続きが読みたいなと思います。キャラが魅力的に書かれた、良い作品に出会えました。もしも続きがあるのなら、楽しみです。 (11月27日 23時) (レス) id: 3109fca5a0 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - シアさん» ふっ…気長に待っておれ‼️待ち時間が長ければ長いほど燃えるよ‼️(鬼畜) (9月28日 10時) (レス) id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
シア(プロフ) - 最新待ってます‼︎ (9月27日 16時) (レス) id: 38b8a932a2 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - 八波さん» フッ…待ってな‼️俺が生きている限り物語は続いていく‼️(嘘)ワイの最推しカチモたそをこれからもよろしくで御座候 (9月24日 17時) (レス) @page2 id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤハウェ | 作成日時:2023年4月29日 23時