１７歳から始めるクソLIFE with 禪院直哉

Episode.5 ページ9

もちろん、主人の耳に届いていないはずがない。





『えらいデッカい獣さん、お腹に住まわせてはりますなぁ』



「…すみません」





まあ、こうやってツッコんでもらえたらまだマシか…




にしてもコイツのこの関西関西した感じは、どこの誰の影響なんだろうか？



禪院家は京都にあるけど、みんな驚くほど関西弁を使わないし関西人っぽくもない。



コイツだけだ。こんなにマインドが関西関西しているのは。





『どれか好きなやつ、あげたってもええで』



「そんな、とんでもございません。直哉様のお食事ですから直哉様がお召し上がりください」



『ほんならこれあげるわ。俺これあんま好きやないねん』





最後まで箸がつけられていなかったほうれん草のおひたしを指差すカス哉。


確かにコイツは葉っぱ類の一品ものが好きじゃないらしく、残すことが多い。





「ほうれん草は体にいいんですよ」



『ん、せやからあげる』




いやお前が食べたくないからやろがい。




箸と器を私の前に差し出すカス哉。


いやそれお前が使ってた箸だし。




戸惑っていると





『ほな俺が食べさせたるわ』




とか言い出すから、急いで器と箸を受け取った。




ファースト間接キスはコイツかぁ…

まあ、初夜じゃないだけマシかねぇ…




おひたしは文句なしに美味しかった。


今日一日全然食べずに働いた後だったから余計に。




ちゃぶ台に肘をついて頭を乗せ、こっちをジッと見ているクズ哉。


見てくんな。





『Aちゃんもここで飯食ったらええやん』




はい？お断りなんだが。




『俺が一人で食べへんかったらええだけなんやから、二人で食べるんは別にええんちゃう？』




そういう問題じゃないんだわ。

私の心を尊重してほしいんだわ。




「ですが…やはり使用人がご主人様と同じ机で食事をt…」



『でも俺が食べとるあいだ暇やろ？』




それはその通り。








こういうときは使用人が負けるのが常。


こういう状況になってコイツに押し勝ったことは今のところない。




今回も私が負けて、明日からこの部屋で一緒に食事を摂ることになった。



コイツといると交感神経が高まるから、胃腸の働きが弱まって消化不良になりそうで怖い。





・





夜、自分の部屋に戻る前にリーダーのところに行って、スケジュールの件を聞いた。

私にだけ伝え忘れたとかなんとか。




わざとなんじゃないかという疑念は、不安と共に心の奥に押し込んだ。

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