１７歳から始めるクソLIFE with 禪院直哉

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仕事が休みの土曜日に、ピアノの練習でもしようと昨日買った楽譜を開く。



そして譜面を見るといつも、ここに連なっている記号たちの意味を、私に教えてくれた人のことを思い出してしまう。





毎晩、寝る準備を済ませたあとに自分の主人の部屋に行って、主人と一緒に寝ていた使用人失格の私。


ピアノを教えてもらうことになった晩に、楽譜の読み方を教えてもらった。




主人は消灯済みということで表向きは処理していたから、大きい電気は消しておかないといけなかったので

私たちは布団にうつ伏せになって、枕元に小さいデスクライトを置いて楽譜を照らした。





塗りつぶしなしの丸は四拍

棒がついてたら二拍

黒丸は一拍で飾りがついてたらその半分


点が横についてたらその音符の半分の拍が追加されて

上に点がついてたら跳ねて


ドの位置がここでそこから順に上がっていって……





今ではスムーズに読めるようになったが、教えてもらったばかりの頃はちんぷんかんぷんだった。


でも、楽しかった。


分からないことが分かるようになるのは、いつだって楽しいものだ。





禪院家の使用人を務める定めにあるA家の中で、やりたいことを一番やらせてもらっていた使用人は確実に私だった。



思考回路はゴリゴリに禪院家仕様でクズだったけど、型にはまっていなくて、自由な人だった禪院直哉に仕えることになって

そして彼に大切に思われていたおかげだ。







私がやりたいと言ったことは何でもやらせてくれたし


行きたい場所はどこでも連れてってくれた。





別に、主人が私に甘かったからと言って、わがままを言いまくったというわけではない。


そこら辺はちゃんと謙虚さをわきまえていた。




向こうが、やりたいことはないか、行きたい場所はないか、と定期的に聞いてくるので、素直に答えていたというだけである。








今思い出していて一番笑える思い出は、禪院直哉と動物園に行った思い出である。


動物に対して可愛いとか全く思わなさそうなあの男を、私は動物園に連れて行かせたことがあるのだ。



今思うとあの頃の私は強すぎて、思い返すだけで笑える。





あの人はきっと、動物園なんて一ミリも興味なかっただろうと思う。


でも、まるでずっと行きたかった場所に来たかのように、彼は楽しそうに付き合ってくれた。





禪院直哉と一緒に行った場所で、楽しくなかった場所なんてひとつもない。

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