１７歳から始めるクソLIFE with 禪院直哉

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早く何か食べてもらわないと



そう思っているのに、直哉様の手を離したくないと思った。



昨日あんな非道いことを言い放っておいて何なんだ、って自分でも思うけど。





「料理ができ次第、すぐに戻りますから。何か食べたいものはないですか？」



『……あんま味濃くないやつ』





優しく直哉様の手をどかして、料理人のところに行った。


体調不良であることと、味の薄いものをご所望ということを伝え、やさしめの味のお雑煮を作ってもらった。





「直哉様、戻りました。

少し起き上がれますか。とりあえずお水だけでも飲まれてください」




そう言うと、しんどそうに起き上がる直哉様。




「お雑煮作ってもらいました。しっかりお食べになってください」




スプーンと器を渡すと、いつものペースでお雑煮を食べ始めた。


…お腹空いてたんだな。


空になった器を預かって、お膳に戻す。







……昨日のことを切り出すべきか、迷った。




いつかは言わないといけないこと。


なるべく早い方がいいのは当然だ。



利用するようで悪いが、今直哉様は弱ってる。


あまりキツく言われることもないだろう。





「……直哉様、私、昨日…

ごめんなさい、ひどいことを言ってしまって。でも…」



『……』



「もう、使用人は辞めさせていただこうと思っています」





直哉様の元から去るだけじゃない。


禪院家から去るのだ。



そうなれば当然、A家からは縁を切られるだろうし、一人社会に放り出されて誰からの援助も受けられない。



でも、それを恐れていたら私はずっと、ここから逃げられない気がしていた。



だから、覚悟を決めたのだ。





ただ、使用人が本人の意思で使用人をやめることは許されない。


主人から解雇されるか、夜逃げかの二択だ。




「昨日私が言ったことは…本心です。私は、綺麗な気持ちで禪院家の方々にお仕えすることはできません。

どうか私を、今日限りで……解雇してください」




これを、最後の土下座にしたい。


これからは、他人と、対等な姿勢で向き合いたい。




『……嫌や』



「(ッ…何でよ…！)」




主人に拒否され、頭を下げてもどうにもならなくなった私は頭を上げた。



お願いだから……


……えっ、





『……Aちゃん以外の女なんか嫌いや』





サラサラの金髪が、私の首をくすぶる。



直哉様は私のことを突然抱きしめて、そう言ったのだ。

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