・ ページ20
水面でゆらゆら揺れる太陽を、ずっと見つめていた。
すると突然誰かが入ってきて、私を抱き起こす。
もう少しだけ、ここにいたいような気もしていたけど。
でも、水から出て酸素を吸い込んでから、下半身が池に浸かっている直哉様に気づいて一気に現実に引き戻される。
『……何であがって来おへんねん』
「申し訳ありません…！」
ハッとして、すぐに謝罪をした。
「すぐにお着替えをご用意します…」
『………』
直哉様にジッと見つめられて、思わず見つめ返す。
その目は絶対にわかっていた。
私の頬を濡らしているものが、池の水だけではないことを。
私を水から救い出したときのまま腰に回されている直哉様の腕に、少しだけ力が入るのを感じて
私はすぐに身体を離した。
「あがりましょう。すぐにお部屋までお着替えをお持ちいたします」
・
「直哉様、お着替えをお持ちいたしました」
私も急いで部屋に戻って、新しい服に着替えてきた。
髪の毛はどうしようもないので、濡れたままくくっている。
直哉様に着替えをお渡しして、着替え終わるまで少し外で待っていた。
着替え終わってから、濡れてしまった服を預かる。
「直哉様、先程は私の不注意でたいへんなご迷惑をおかけしました。お助けくださったこと、深く感謝申し上げます」
直哉様から返事はなかった。
私はそのまま預かった服を持って洗濯所に向かった。
・
それからというもの、いつもに増して気分が沈んでいる日が多くなった。
両親の顔を思い出してから、少しだけ、A家の養子になる前の普通の生活が恋しくなってきて
毎朝、自分が使用人として目覚めることに落胆した。
普通の生活を送ってみたい。
普通に学校に通って、友達とお出かけしたり、家族と話しながらご飯を食べたりしてみたい。
毎日人にペコペコ頭を下げて、丁寧すぎて回りくどい敬語を使って、一日中働いて、自分の好きなことをやる時間すらないこの毎日が、嫌になってきた。
前から嫌ではあったのだが、最近その度合いが著しくあがっているように感じている。
『……ちゃん、』
「………」
『Aちゃん、』
「……あ、はい、何でしょう」
『一回で返事しろや。耳聞こえへんのか』
「…申し訳ありません」
たった一歳年上なだけの
この、情けも人情もない男に
私がこれまでに何度土下座をしてきたことか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1061人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヤハウェ(プロフ) - y1u2i3n4aさん» いえいえとんでもございませぬ‼️あなた様の涙腺を少しでも刺激できたなら身に余る光栄…♪これからも精進致します‼️‼️アーメン⭐︎ (2月20日 11時) (
レス) id: 3429f701c5 (このIDを非表示/違反報告)
y1u2i3n4a(プロフ) - ああもう最高です。こんな素敵な作品をこの世に授けてくれて本当にありがとうございます！！ボロ泣きです！！！！ (2月17日 0時) (レス) @page49 id: 9135bf7da8 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - 都さん» 覚えていますよぉ〜。一度でもコメをくれた方の名前は、未来永劫覚えておく主義なのです⭐️いろんな場所を回って、改めてこの作品の神具合を理解したということですね‼️ウンウン、喜ばしい進化です❗️応援サンキュー！！ (1月7日 23時) (レス) id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - あい(^_−)−☆さん» 全ての直哉推しが還る場所はここだね‼️原点にして頂点❗️それがこの作品✨（違う）来年も再来年もこのクソLIFEを読み返して、素敵な人生にしようねッ❗️ナオヤ万歳🙌 (1月7日 23時) (レス) id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
都(プロフ) - 覚えてくださってるか分かりませんがおひさ‼️ヤハウェ様‼️直哉様の作品読んできたけれどやっぱりこのヤハウェ様の作品が一番好きです‥！幸せをありがとうございます！天才・神ヤハウェ様のこと応援していますー！！ LOVE❤️ (1月7日 3時) (レス) @page49 id: b09a3540b4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヤハウェ
| 作成日時：2022年8月4日 23時
