１７歳から始めるクソLIFE with 禪院直哉

Episode.7 ページ13

『Aちゃんがおらんかったら知らんババアが世話しにくるからむっちゃ嫌やねん。はよ元気になってな』




すごく優しいことを言われているとは思うのだが、コイツは何を言っても何か胡散臭いんだな。


でも、胡散臭くても、そんなことを言ってもらえるだけで気持ちは暖かくなった。



…直哉様、もうお部屋に帰っちゃうのかな。




言っておくけど、この時の私はすごく弱ってたし、精神的にも色々追い詰められてて参っていた。


人肌が恋しかった。


どうしても、誰かに寄りかかりたかった。




だから、こんなことを言ってしまったのも、仕方ないねって言ってほしい。





「…直哉様、」



『ん？』



「もし私が…直哉様に…ここにいてくださいとお願い申し上げたら、直哉様は…そうしてくださいますか」





後になってこの発言を、後悔するだろうとはこの時も分かっていた。

でもだからってどうしようもなかったのだ。




私の髪を撫でていた手が止まる。



ほんの少しの間が怖かった。



嫌に決まっとるやろカス、とか言われたら、いつもは腹が立って終わりだけど

今日ばっかりは傷ついてしまいそうだった。





『…ん、ええで。帰ってもどうせ暇やし』



「じゃあ…もう少しだけ…ここにいてください」





薄暗がりの中で、直哉様と目が合った。


ちょっと戸惑っているような表情。



私、困らせてるのかも。




『Aちゃん、』



「…？」



『ぎゅーしたろか？』



「…えっ？」




そんなの、断るのが普通だ。

いつもみたいに、私は使用人ですからって。



でも…そうして欲しいという気持ちが止められなくて

気がついたら私は、直哉様に抱きついていた。



今日は使用人失格なことをしてばかりだ。



会食でぶっ倒れたり、直哉様にご飯を食べさせてもらったり、抱きついたり

明日には解雇されるかも。



でも…それでもいい。

今はとにかく、抱きしめていて欲しい。




初めて感じる人肌の暖かさに、涙が止まらなかった。


ご主人様の服を涙で汚すなんて、これも使用人失格だけど。




「………ッ……直哉様…」



『………』



「…直哉様……ッ」




抱きしめられるってこんなに暖かくて、安心するのだと感動した。


いつまでも、こうされていたいくらいだ。




相手がコイツでも、そうなのだ。







…直哉様はずっと、そうしていてくれた。


何を言うわけでもなく、ずっと


私が泣き疲れて、また眠りに落ちるまで。

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