7 ページ7
会議室には既に何人かが集まっていて、しばらくして眠そうなコネシマと、それを引きずるようにしてトントンがやってきた。全員が席に付けば、グルッペンは口を開く。
「集まってもらって悪かった。しんぺい神の報告書のことでな。」
──────────大まかな内容はこうだった。
現在、しんぺい神は二人の動向調査のためにあちらで軍医として務め、その中で聞いたことや集めた情報を纏めてもらった。
まず、Aとエーミールはこちらへ来たい、とまでは言っていなくとも、再会したい意向はあること。
そして今、Aは扱われ方が粗末であったり、彼女を常に擁護するエーミールもが、稀に他の幹部から批判を受けたり。国自体の幹部組織が上手く機能していないこと。
「…それに、今あちらは我々国との国境以外でも軍を割く必要がある。この間第三都市の近くの川が氾濫して被災者が出てるとか、最近では南西部でも国境の小競り合いがあるとか…」
「…簡単に言えやグルッペン。つまり何したいん？」
こじんまりとした赤い帽子を被る男性がそう切り出すと、グルッペンは「待ってました」と言わんばかりに口角を上げる。
「レーベン村を、エーミールを、Aを奪い返す絶好の機会だと思わんか？」
顔を険しくしたり、今にも歓声を上げそうであったり、不安げにこちらを見てきたりなど、反応は様々だった。
──────────急に言い出した話だ。仕方が無いだろう。
「しんぺい神にはまた数日後に最新の報告書を貰うつもりだ。そしたら最終判断を下す。以上」
静かな会議室で、静かに奪還戦の幕が切られた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ブール国、模擬訓練室。
「いった…！」
「A？！」
「えっしんぺい…おかえり」
「いや、おかえりじゃないでしょ。何してるの！？」
「ナイフの練習してたんだけどさ」
「実践用使わないでゴムでよかったでしょ〜！とりあえず治療するよ？」
────窓から見える赤く色づき始めた葉は、風に揺られていた。まだ枯葉でもないのに、ひら、ひらと、落ちてく葉もあった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：HAL | 作成日時：2017年9月22日 20時
