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うーん…無難に水でいいか。
自販機に小銭を2回入れ、2本の水を持つ。
皆は撤収作業してるはずやから、はよ行って手伝わなな。
急ぎ足で体育館へ戻り、扉を開けようとした。
その扉のすぐ向こうで声が聞こえる。
｢ やばいよな？言うだけ言って1番に帰るんは笑 ｣
｢ それな、しかも言い方ほんま上からやし。モカ可哀想 ｣
｢ 確かに脚本はめっちゃいいけどさ、偉そうよな ｣
あたしのことや。
直感がそう告げた。
｢ 照明変更とか音響変更とかもあったしな。
今更変えんなっちゅーねん ｣
｢ ええよな、本番何もせんでええねんから ｣
何も聞かなかった振りをして扉を開ける勇気はなかった。
手持ち無沙汰な2本の水は、付箋に名前を書いて貼っつけて
前に置いておいた。
誰かに指示をするものはそれ以外のものに大抵好かれない。
分かっていた。
けど実際の言葉を聞くと想像以上に痛い。
そうかあ。あたし、偉そうか。
めちゃくちゃ気ぃつけてたつもりやったんやけどな…
気づけば体育館の裏側に1人でしゃがみこんでいた。
悪意を向けられるような経験をしたことがなくて
どうすればいいのか分からない。
明日以降、こうしてほしいと伝えるのが怖くなる。
｢何してるん、ここで｣
ぐしゃ、と地を踏みしめる音。
｢…竜雅くん｣
竜｢どした。そんな顔珍しいやん｣
｢あたし偉そう？｣
弱くなったと感じた。
今までならきっと、何も言わなかったから。
今じゃ竜雅くんの目も見れない。
竜｢偉そう？むしろ低姿勢すぎるけどな。何で？｣
｢…主役の2人汗だくやったから、飲み物買いに行って戻ったら
そうやって言われてるん聞いた｣
竜雅くんと2人で喋るのは脚本出来た日以来。
久しぶりやけど、久しぶりな気がしない。
そうなんやと薄い反応を返してきた竜雅くんが
あたしと同じ姿勢をとった。
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月12日 21時
