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A「くのいちの体見て感想がそれだけですか。まぁ恵まれてはないですけど」
胸元に当てていた手ぬぐいをどかして呟いたAに雑渡は笑った。
雑渡「流石にこの歳になると結構見慣れてるからねぇ。割と好みではあるけどね」
A「背中ぬぐいます」
雑渡「ありがと」
湯に浸した米糠を入れた袋で背中を軽くぽんぽんと洗う。米糠は上質な洗顔料であり洗身料である。
大きく鍛えられた背中の筋肉を見て呟いた。
A「かっこいい」
雑渡「え、どうしたのいきなり、それともう一回言って」
A「かっこいい、って言ったんですよ。
背中を見ればその忍びがどんな人かわかる、と先生に言われたのを思い出して。筋肉のつきかたや、傷で分かるそうです。私はまだ分からないですけど」
桶のお湯で背中を流し、自分の体を洗うために雑渡の隣に風呂椅子を置いて座るとAは続けた。
A「鍛えられた背中がかっこいいとは思いましたよ」
雑渡「こんな火傷だらけの背中がかい?」
A「思ってたんですけど」
雑渡の質問には答えずAは髪を洗いながら聞き返した。
A「昆奈門様は助けるために火傷を負ったことを後悔したことはありますか?」
雑渡「ないよ。尊奈門の父上を助けようとしたのは私の意思だから。
この火傷だって今となれば手入れさえ怠らなければそう痛まない。
これを後悔するってことはあの時の自分の意思を後悔するってことだからねぇ」
続けるように続きをAが繋いだ。
A「だから後悔なんてしたくない、でしょう?私もタソガレドキへ来る時、同じことを思って来ました。
あの夜、昆奈門様と出会わなければ、手当てをしなければ、忍術学園と仲の良い城へ就職して、学園へ顔を出すことも出来たはずでした。
でも、あの時手当てをすることを決めたのは私の意思でしたから。その行為を後悔したら、私は自分で自分を否定してしまう。
この火傷は、昆奈門様が自分の意思を行動に示した証。だからかっこいい、と言ったんです」
雑渡「そっか」
ざばーっと湯を被って体を流し、そろって湯船に浸かる。
A「……はぁ〜。良い湯です」
手足を伸ばして肩まで沈み込むA。
四肢を伸ばして脱力し、しばらくしてから雑渡が頭に触れて軽く撫でた。
雑渡「触っていいかな」
A「………長湯すると皮膚ふやけますよ」
Aはこくり、と頷いて少し雑渡の方へ寄った。
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みずけい - すごい…お上手ですね!絵も作品も設定も!とても面白いです。尊敬しちゃいます (1月6日 16時) (レス) @page26 id: 56c1fb1e39 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 涙さん» ああ!!すみません変換完全にミスりました!ありがとうございます! (2019年10月13日 19時) (レス) id: 31c0208f5b (このIDを非表示/違反報告)
涙(プロフ) - 92話祝元になってますよ? (2019年10月13日 19時) (レス) id: 5e09944bd4 (このIDを非表示/違反報告)
彼は誰時 - 最近、組頭に沼ったのですが…ここが楽園か……最高です!まったり更新待ってます! (2019年10月13日 19時) (レス) id: fd426a3898 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 名無し65455号さん» ありがとうございます!ミスってました直しときますね! (2019年9月17日 15時) (レス) id: 14131fd91c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年8月17日 11時