恋人ごっこ ページ34
ほら、と「七三A」と題された私の本を取り出すとひらつかせた。
「どこかのページには載ってるかもよ、“そーいう未来”だって」
「別にいいわよ…見なくたって。
未来が決まってて必ずそうなるとしたら、その未来が望むものであれ望まざるものであれ、私は知りたくないし考えたくもない。
何をしたって変わらないなら、考えたりすることも無駄じゃない?」
私が今まで何を考えて、これから何を思い望むのか、土籠先生は知っている。全部読んでいる。
だから私は思考するだけで決して口にはしない。今までも、多分これからも。
「未来が絶対変わらないなんてあり得ないってことは俺が証明したでしょ。
限りなく0に近いけど0じゃないよ?」
ぽすん、と隣の花子くんの肩にもたれかかって頭を乗せた。
落ち着く。
誰かが側にいるっていうだけで気分が良い。
_______もしも未来が変えられるなら。私の手の中に未来をひとつだけ変える鍵があるとしたら、私はそれを寧々ちゃんに使ってあげたい。
「いいの。
私が自分の未来を変えようと思わないのは、願掛けみたいなものだから。
ラッキーメーターみたいなものだよ。
良いことと悪いことは同じくらい起きるらしいから、私がちょっと良いことを望むのを我慢して他の子にその分が行けばいいのにな、って。
寧々ちゃんの未来が少しでも変わりますようにってね。だから少なくとも寧々ちゃんの寿命が来るまで私は何も願わない」
「Aってばそういうとこは
怪異にリアリストもロマンチストもないだろう、と思ったが存外もたれるのが心地良くてそのままでいた。
白い髪にエメラルドグリーンの毛先をした小柄な少女のことを考え、絵空事を呟いた。
「寧々ちゃんだったら、私とコイバナ?______って言うのかな、今時は_____したらひっきりなしに困惑して反応が可愛い気がする。
花子くんは、私の何なんだろ?友達?仲間?」
んー、と首を傾げられてから何気なさそうに言われる。
「言い表す的確な名称なんて無いんじゃない?
まぁ少なくとも、Aが土籠のものになっちゃうまでは末長くコイビトごっこしてると思うよ」
恋人ごっこ、という言葉に成程、とふに落ちた。
多分それが一番的確だ。
人間と違って怪異は長く時間を過ごす。
お互いに悲しい時、話を聞いて欲しい時に側にいて愛情を注ぎ合う。1人だけの恋人を作るというのとは、また違うのだ。
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ほのか - やばい。私の好みにどんぴしゃり! (2020年8月4日 9時) (レス) id: ef884c23cc (このIDを非表示/違反報告)
?返事がない、筆記試験終了の安心で寝ているようだ(プロフ) - ひえっ、めっちゃ細かく考えられてる、すげぇ… (2020年2月15日 8時) (レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - 乾 巽さん» ですよね!!うぅ〜......土籠先生... (2020年2月5日 17時) (レス) id: f38b18c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - すばるさん» そうなんですか…いきなりログインできなくなる系困りますよね (2020年2月2日 17時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
すばる - 乾 巽さん» わああ!!ありがとうございます!!!それがですね、設定ってどこぞや?と思って血眼で探したらログインしないと出てこない系でした...Wii Uなんで、前ログインできてたんですけど何故か去年の夏からログイン出来なくて...ぴえん(;ω;) (2020年2月2日 17時) (レス) id: f38b18c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2020年1月19日 11時