5.獣の案内人 ページ16
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それから、私はベッドの上で目を覚ました。
あの中華服は見えなかったけれど、部屋にほんのりと上品な香りが残っていて、多分、センラさんが運んでくれたんだろうなと思った。
抱き心地抜群のクッションに身体を預けたまま、ボンヤリと天井を眺める。無意識にも心の蟠り様な、不安の塊の様な溜息がはぁ、と抜けていった。
なんだか、凄く疲れた。
寝て起きたばかりでしょって言われたらお終いなんだけれど、色んな事がありすぎたのだ。一回の睡眠で疲れを取るには足りないくらいには大変な一日だったとは思う。
長時間と連続の献血運動に、休む暇もなし。
挙げ句の果に色事を迫られる。
それって完全にブラック企業の要素の詰め合わせの象徴じゃない。
人間の私が魔物相手に弁論するのはあまり宜しくない所があるかもしれないけれど、ちょっとは人間の身にもなってほしいものです。
「はぁ……」
久しく訪れた悠々たる時間。。。
何となく浮かんだ言葉や文句を心の中でボヤいてみるも更に気分が重くなった。あぁ、本当に疲れたな。
毛布を被り直すと、再度睡魔が押し寄せてきて、瞼もずり落ちて来る。
寝てる間に誰かが血を吸いに来るかな……
いつの間にかハロウィンが終わってて、食べられたって事もあるかも……
そんな事を考えて、でも直ぐに忘れる事にした。その時はその時だ。取り敢えず今は寝よう。
静かに目を閉じて、意識が薄くなるのを待とうとした……時だった。
ぼすん!!
何とも間抜けな音と共に"何か"が私の
「ぐぇっ!!」
突然襲いかかってきた、グーパンチ並の痛烈ショットに我ながら情けない声をあげ、背中を弓形にして飛び跳ねた。
内臓を圧縮された様な気持ち悪さに吐き気を覚えて、体制を横向きにして蹲りながら、あまりの痛みに呻く。
えぇ、ちょっと待って
確かに、その時はその時って思ったけど幾らなんでもこれはあんまりでしょう。普通に痛いし、今ので眠気吹き飛んだ……
本気で文句を言ってやろうかと思って、寝ぼけなまこを擦り、まだ圧迫感のある膝上を見て、目を見張った。
私を襲った犯人は四人の誰でもなかったのだ。
膝丈ぐらいの身長のまあるい輪郭。
書道で使う筆みたいにふさふさの尻尾。
ビーズをはめ込んだみたいなつぶらな瞳。
縫いぐるみみたいな姿に、コテンと頭を傾げて愛らしくも鳴くそれは……
「た、たぬき?」
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます!拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです!! LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました!! (2020年6月16日 0時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う?濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる! (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!!よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください!笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです!応援してます! (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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