神様廿 ページ21
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翌日になるとすぐに着替えた桑島は、隣で眠る炭治郎を起こさないように静かに蝶屋敷を出た。
刀鍛冶の里へ行く前に、墓参りに行きたい。そのために御供え物を買いに早く出たのだ。それに菓子屋は行列が出来れば面倒なのもある。
財布を握り締めて、久方ぶりに菓子屋に訪れた。メニュー板に書かれた太く存在感のある文字が並んでいる。中は静かだが、既に数人が来店していた。
何かと緊張しているのを悟られぬよう、自分も周りと同じようにメニューをまじまじと眺め始めた。
どうしようか。普段お菓子など無縁だった桑島からすれば、どれが良い物なのかがさっぱり分からなかった。
段々と人も増えて来て、迷いに迷っている自分に視線が集まってきた。長居してしまって邪魔なのだろう。
「っ…」
視界から入ってくる様々な情報で頭が追い付かない。もっと焦ってしまい注文することも出来ない。泣きそうな子供のように、下を向いた。
こんな事ならば、お館様に相談していれば良かった。汗がこめかみから流れる。視線に耐えきれず、もう何でもいいから注文しようと考えた矢先。声をかけられた。
振り返れば、女性だった。天からつり下ろされた針金に引っ張られるように凛と、堂々とした姿勢だった。歳上の余裕を持った素敵な雰囲気にどこか心が落ち着く自分がいた。
「ここのお店は初めてですか?」
「は、はい…。けど自分、こういうのに疎い者で…何を注文したら良いのか分からなくて…」
小さく震えた声だった。情けなさが自分の中で渦巻く。
しかし、女性は桑島に優しく微笑みメニュー板を指差した。
「私のおすすめは、きな粉餅ですよ。ここのきな粉餅は格別に美味しいんです。良かったら試してみませんか?」
そう言う彼女が持つ紙袋からはきな粉餅ではなく、おはぎ特有のあんこの匂いが微かにした。言っている事を矛盾しているそれを見つめていると、女性は困ったように苦笑いする。
女性は、それでは私はこれで、と丁寧に挨拶をすると、微笑みとほのかな花の香り、二つ置き土産を置いて女性は去って行った。
その背中をぼんやりと眺めていた桑島は、はっと我に返って店を出た。
「あ、ありがとうございました!!」
さっきと同じ着物の柄を見つけた。先の道を歩く女性に届くよう大きな声で叫んだ。少しどもってしまって恥ずかしい。
隣に並んで歩く白髪で、顔数個分高い長身の男性は桑島を振り返った。だが女性は聞こえなかったのか、こちらを気にする様子もなく歩き続ける。その後、女性と会話をして幸せそうに微笑みながら行ってしまった。
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パプタピ - ねむりねこさん» こちらこそコメントありがとうございます!今はテスト期間なので作るのは遅くなると思いますが、待っていて下さると幸いです!あと、別の端末から送ったため名前が違うんですけど、あんまり気にしないで下さい。 (2019年11月13日 19時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - 返信ありがとうございます!次回作、楽しみにしております!!! (2019年11月13日 15時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ - ねむりねこさん» ご愛読ありがとうございましす!薄情でハクジョウって読むんですね、ご指摘感謝します。確かに薄情者!って言いますもんね…。もう本当、作者のポンコツぶりが、どんどん暴かれていく…(震)次回作品も応援お願いします! (2019年11月13日 15時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - 鬼滅亡…………… (2019年11月13日 9時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています!一つ気になったのですが、薄情はハクジョウと読みます!水を差してしまってごめんなさい、応援してます! (2019年11月13日 9時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パプタピ | 作成日時:2019年11月7日 18時