【ダイヤのA】ああ！あのトキメキをもう一度【御幸一也】

64回裏 ページ30

まあそんな事もあったが、ここに来てこっちの打線の勢いも止まってしまった
収穫はあったからそろそろ終わるかな
チラリと監督の顔をマスク越しに見ればその視線は一年のベンチに向けられていることに気が付く



「まだ4回ある！はっはーん！このまま終わってたまるかよ！」


そこにはバットを振る沢村の姿があった
うーん、私的にはこいつのピッチングも見たいんだけどなぁ


「ね、監督、もっと収穫欲しくない？」

「…お前が言うなら仕方ない、あと1イニングだけ様子を見るか」

「そ〜こなくっちゃ」



ドスドスと足音を立ててバッターボックスに立った沢村が腰を直角に折って元気のいい声を上げた


「よろしくお願いします！！」

「う〜ん、元気は100点」

「ざす！！」



全く、ほんと飽きないやつだなァ
丹波さんに続いてマウンドに上がった川上は沢村相手に闘志を燃やしている様子だ



「(確か東さんとバトったの、川上に対しての叱咤が原因だっけ？川上も気が弱いとこあるし、沢村に対してなにか思う所はあるんだろう)」



まぁまずはストレートで様子見、と投げさせた球を沢村は「おいしょー！！」と全くタイミングの合っていない状態でフルスイングしていた



これ、は…


「(そのまま二球目もど真ん中で当たらなそうだな、あはは)」



予想通り、沢村はど真ん中の球に対しても思いっ切り空振っていた
そんな姿を見て一年ベンチからも野次が飛んで来る




「(でも、こいつ今踏み込んだな、高校野球初打席なのにインコース怖くないのか、それとも何も考えてないのか…投手にとっちゃビビらず踏み込んで来られるのは結構やだよね)」



川上の顔付きが少し変わる
良いとこ頼むよ、サインに頷いた川上を見てミットを構える
しかし投げられた球は思いっ切り下に叩きつけられた




「っしま…！」



空振った沢村に気を取られすぎてミットに収まりきらなかったボールを後ろに逸らしてしまった
なっ、私としたことが！！

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