【ダイヤのA】ああ！あの暑さをもう一度Ⅱ【御幸一也】 (ページ27)

今日:10 hit、昨日:36 hit、合計:55,232 hit

38回表ページ27

稲実に、鳴に負けた

二番手で出てきた鳴の球を最後まで捉えられなかったうちはベスト4でこの夏を終えた

きっとまだ選手たちは食堂にいるだろう
そんな彼らの顔を見ると、様々な感情が溢れてくる気がして私は自身の部屋に籠った

記録係としてベンチに入った私の目から見ても、鳴の投球はあの頃のものとはまるで違っていた

私がもっとあいつを知ろうとしていれば、私が…
そんな考えしか今は頭に浮かばなかった

先輩やスタンドの同級生たちが涙を流す中、私と一也だけは噛み締めるようにして空を見上げていた
青空は無情で、それでいて澄み渡っていて、まるで私達を嘲笑っているかのようにも見えた

「…ちがう、私がしないといけないことを、思い出せ」

今日の試合のデータと映像が入ったバックを開く
それをテレビに繋ぎ最初から見る
傷が痛い、心が痛い、頭が痛い、体の全てが悲鳴を上げている

それでも私は、私には、今彼らにできる事はこれだけだ
私が逃げてどうする、私は私の半身のために、チームの為に戦うと決めたんじゃないか

何十分、何時間と繰り返し食い入るように見る
来年の夏、更に強くなって私の前に立ちはだかるであろう彼を今までの人生で一番長い時間目で追う

「みつけろ、どんな些細なことでもいい、なにか、決定的なものを、絶対にある、穴を探せ、私たちの攻撃を通す為の綻びを…」

その後、私がいつ眠りについたのかは覚えていなかった