好物頂上決戦【月島 蛍】

1人で倒すわけではない。 ページ38

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季節はあっという間に過ぎていった。


新学期が始まって、部活の時間が短くなる。

その短い時間で、最後の調整が行われていた。






10月の初旬には、最後の東京遠征へ。

その頃には変人速攻の成功率は9割になっていたし、

旭さんのサーブも、山口くんのジャンプフローターもノヤ先輩のトスも、シンクロ攻撃も、

みんな、精度が上がっていた。







月島の方は、自主練を覗きに行けば赤葦さんと組んで練習をしていた。





「(人1)。今日も練習見にきたの？」

「はい。赤葦さんと月島は何の練習を？」

「まだ成功率低いから見ないで。あと帰って」

「いだ！デコピンする必要ないじゃんか…」

「嫉妬は見苦しいよ、月島。(人1)、俺が慰めてあげるからおいで」

「赤葦さんって本当策略家ですよね。絶対行かせませんから」






月島はちょっと早口で、悪かった。ごめん、と謝ってデコピンしたとこを撫でてくれた。

突然の優しさに、好意を自覚してしまった私は驚いて照れてしまった。





「…許してやらなくもない」

「何その言い方。ウザッ。ショートケーキ口に詰め込んであげようか？」

「ただの悪夢じゃんか、断る。眼鏡踏むぞ」

「あっそ。できるものならやれば」






フンッと余裕そうに笑う月島にイラッとしたものの、


やっぱりそれでこそ月島っぽいなあ、と完全に絆された脳内は月島に甘かった。








それから木兎さんは月島に、ウシワカに絶対勝ってこいと激励の言葉を送っていた。


圧々勝とかいう変な言葉を生み出してたけど。








「…簡単に言うよね。ウシワカ倒してこいなんてさ」

「月島なら出来ると思って言ってるんじゃない？」

「…あの人そんな考える人じゃないデショ」

「失礼すぎだろ」






でも1人で倒すわけじゃないから大丈夫でしょ。




そう言った私の頭に、月島の大きな手が伸びて、ぐしゃりと頭を雑に撫でられる。







「オイやめろ、バカ」

「…本当、日向みたい」

「は？どういう意味？」

「基本バカなのにたまにいい事言うとことか」

「褒めてるのか貶してるのかどっちだよ」






頭を撫でていた手が頬に伸びてきて、むにゅ、と頬を軽く引っ張られる。







「…ブロックでは、誰にも負けない」

「！」

「(人1)が教えてくれたこと、忘れてないから」






安心しなよ。月島はそう笑った。

私は胸が一杯になった。けど、









…とりあえず頬つねるのやめろ。←

試合開始。→←答えが出てるようなもの。

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