好物頂上決戦【宮 治】

今日だけやで。 ページ17

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ふわふわとした感覚の中にいる。

おでこが冷たい。






「(人1)。おかゆできたで」

「ありがとう…ゴホッ」

「無理して全部食べんでええからな」

「はあい」






ニッコリ笑う今日の治は、やっぱり優しい。

病人には優しくしようスタイルかな。まあこれでいつもみたいに鬼畜だったら人としておかしい。





「あつ、」

「うわ、ベロ火傷したんちゃう？」

「したかも…ひりひりする…」

「ほら水。それとスプーン貸しや」





水を渡され口を冷やす。


治は私の手からスプーンを受け取ると、フーフーしてくれた。

そして、スプーン口を向けられる。






「えっ…と、」

「ほら、はよ口開けや」

「え、」

「口移しのほうがええんか？嫌やろ？はよ口開け」






半分脅しだ。

ふわふわとした頭で、口を開かないと危険だと悟り、おずおずと口を開く。






「ん、」

「…美味い？」

「おいしい」

「良かった、おかゆとかは食べれるんやな」






ほんだら嫌いなんはおにぎりだけかいな。

ちょっと不機嫌気味に言う治に、ゆっくり頷く。





いつもやったら手出してくるけど、

今回は何も言わずに頭を撫でてくれた。





大きな手が、心地よかった。





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「ごちそうさま、」

「全部食べれたやん。その後吐くなや」

「それはちょっとわからん…」

「…とりあえず薬飲みや」








治は食べ終えた食器を洗いに一旦部屋を立ち去った。

私は薬を胃に流し込む。





外はもう、茜色に染まっていた。









「薬飲んだか？」

「のんだよ、あのね、おさむ…」

「なんや」

「…きょう、ぶかつはやくおわってきてくれたんよな？ありがとお…」






うれしかった、と呟くと、

ぎゅっと手を握ってくれた。







「俺こそ昨日ごめんな。追いかければ良かったんに」

「あれは、わたしのせいや…それに、だいじょうぶっていったんに、かぜひいたし…」

「ホンマにな。アホやで自分」

「ごめんなさい…」







だんだんと瞼が落ちてくる。

薬が効いてきたようだ。








「おさむ、もうかえる…？」

「何で？」

「わたしがねるまで、そのまま、て、にぎっとって…」

「…今日だけやで」







良かった。



私は安心して目を閉じた。






意識が完全に落ちる前、


おやすみ、と優しい声が聞こえた気がした。









「…ホンマに、今日だけやで」




大きな手で、まるで大切なモノを愛でるように。

そっと髪を撫でた。

抜け落ちた記憶。→←幼児退行。

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