名前のない女の子。 ページ40
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「今日は一段と蒸し暑いですね」
「う、うん。せやね」
「練習、見させてもろても大丈夫ですよね?」
「うん、大丈夫、やで…」
ニコニコと笑う女の子。今日はいつもいる友達がおらず、1人だった。
「(こんな感じの子やっけ?もっと、敵意むき出しな感じやった記憶あるんやけど…)」
そういえば、4月から顔は知ってるけど、名前を知らない。
「あの、名前は、」
「ごめんなさい。貴方のことあまり好きやないから教えれません」
「え、あ、そう…」
どストレートに言われ、ちょっとへこむ。
まあこの子治のファンやし、前からずっと私のこと嫌いそうやったし、仕方ないかぁ。
私は持っていたカゴを地面に置く。
「…ほんで、私になんか用やんな?練習見に来ただけやったらわざわざ私のとこなんか来んやろうし」
「さすが先輩。言いたいことあって、探しとったんです」
「なに?私戻らんなんから早めに頼むな」
「なら単刀直入に言いますね」
「私、治先輩が好きなんです。貴方より、誰よりもこの想いは強いんです。
やから、治先輩に馴れ馴れしく近づかんとってください」
嫌いなんですよね、治先輩のこと。
女の子は笑みを崩さずに言う。
「うん、嫌いやで」
「話早くて助かりま、」
「でもそれは無理なお願いやな」
ガシャン、と地面に置いていたカゴが蹴られ、中身が転がる。
女の子は、笑みを崩して私を睨む。
「…は?意味わかんないんですけど」
「せやな。私にも分からん」
「ナメてるんですか」
「まさか。でも、」
「こんな風に、選手が飲む大切なドリンクを蹴飛ばすような人に、治は渡さへん」
これ、治の飲むやつなんにな。
中身の溢れたドリンクを1つ拾い、その子に見せる。
「…確かに、ちゃんと恋しとる子にとっては私は邪魔でしかないよな。それは分かっとんねん。
だから、私のことはいくら罵倒してもええ。
でも、バレー部にだけは、何もせんといてな」
いくつかの溢れたドリンクを作り直し、カゴに入れる。
横を通り過ぎる時、腕を掴まれる。
「…ホント、前からムカつくと思うてたんですよね。
まさかそれ言われて私が大人しくなると思うてるんですか?」
「…何が言いたいん」
「いえ、何も?ただ、」
新学期が楽しみで仕方ないですわ。
女の子の、どこまでも不気味な笑みに、ゾクリとした。
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亀さん - 完結おめでとうございます!治最高…………次回作も読ませていただきます! (2020年4月2日 10時) (レス) id: 99a2eebfea (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - やまうみ。さん» コメントありがとうございます!初期からのファン…!嬉しいです、私の作品読んでくださってありがとうございます(^ ^) なるほど…おじいさまの名言、必ずやどこかで使わせていただきます!もう少しで完成するので待っててくださいね〜(^ν^) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» コメントありがとうございます!ドSの治による荒治療はいかかでしたか?(^ ^) それはまずい!もう一度宮治の荒治療を受けることをお勧めします(無限ループ)← 死なないで〜…次回作もぜひ読んでくださいね! (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ルナ・エイヴェルさん» コメントありがとうございます!過呼吸ぎみですけど大丈夫ですかッ(*_*) 結婚します(真顔)← ぜひぜひひっそりとニヤニヤ、キュンキュンしながら読んでください〜(^^) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 狐さん» コメントありがとうございます!いえいえ!そう言ってもらえるだけで明日を生きる活力になるので大丈夫です← ぜひぜひ、次回作もよろしくお願いします〜(^^) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるか | 作成日時:2020年3月22日 23時